海外だより

凱旋門賞前夜

早いもので1週間少しで凱旋門賞を迎えます。日本ファンが注目するハーツクライ産駒の日本生まれ欧州育ちコンティニュアスの動向ですが、凱旋門賞は未登録のため27日の追加登録締め切りまで、管理のエイダン・オブライエン調教師はジックリ塾考するようです。海外の追加登録料はバカ高く、凱旋門賞の場合12万ユーロ≒1900万円とされています。冷やかしは論外として、記念出走を排除し名誉と格式を維持するには妥当なリスクなのでしょう。
実質的な登録馬はかなり絞られて来ていますが、全体としては〝横綱不在〟の大相撲みたいなイメージになっています。まぁ、それはそれで実力伯仲の白熱戦が展開されている今場所の大相撲のように、ある種の面白さも広がるわけですが。

ブックメーカー各社の前売オッズで一貫して1番人気を独占し続けているのが地元フランス馬エースインパクトです。目下5戦5勝と無敵街道を真っしぐらに驀進しています。後方から競馬をするタイプですが、長く良い脚を使い、勝負どころで繰り出す末脚のキレは天下一品。仏ダービーで叩き出した2分02秒63は2100mの世界最高記録でした。スピードも一級品です。ただ気がかりなのは、2400mは未経験なことと、古馬とは未対決というキャリアの浅さでしょうか?しかし似たような課題を抱えていたソットサスに凱旋門賞を戴冠させたジャン-クロード・ルジェ調教師とお馴染みのクリスチャン・デムーロ騎手のコンビの後押しが力強い援軍になりそうです。父クラックスマンは怪物フランケルの初年度産駒で英チャンピオンS連覇などG1計4勝の一流馬です。しかし所属した当時のジョン・ゴスデン厩舎には、凱旋門賞連覇の女帝エネイブル、長距離の鬼神ストラディヴァリウスがおり、クラックスマンを含めて全馬の主戦はランフランコ・デットーリ騎手でした。凱旋門賞の出番が回って来なかったのが真相です。エースインパクト、果たして父のやるせない想いを晴らすことができるでしょうか?

2番人気に推されているイギリス馬フクムは、昨季のヨーロッパ年度代表馬バーイードの1歳違いの全兄という血筋だが、全弟が無敗のままマイルG1を5連勝するなどスピードの勝った天才肌だったのに対し、こちらは2400m級のコロネーションC、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSなどで一歩ずつ出世の階段を登って来た晩成タイプの趣があります。バーイードが唯一ラストランだけ敗れたのとは逆に、デビュー戦で躓いた以外は連戦連勝で凱旋門賞で幕を引くまで連戦連勝だった超天才型の父シーザスターズとの父子制覇が期待されていますが、日本ファンから見ると昨年のドバイシーマクラシックでシャリヤールの7着だった印象が残り、今季の充実がどこまで本物か?そんなモヤモヤが解消し切れない気分もありそうです。
日本馬スルーセブンシーズは15倍程度のオッズで伏兵扱いですが、思われていたより高く評価されているようです。昨今の日本馬全体のレベルアップの後押しを受け、何と言っても父ドリームジャーニーという血統的背景が不気味に映るのでしょうか?凱旋門賞の栄冠が初めてヨーロッパ以外に海を越えるのか、と地元ホースマンに冷汗をかかせたオルフェーヴルの全兄なのですから。父も叔父も強かった宝塚記念を激走しての渡仏だけに、余計に不気味さが増すのでしょうか?

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