海外だより

ハーツクライが英セントレジャーに王手!

ヨーロッパでは秋のチャンピオン決定シリーズに向けて、短い夏を駆け足で走り抜けるように重要前哨戦が毎週のように行われています。“伝統のイボア開催〟が開幕したヨーク競馬場では、凱旋門賞や英チャンピオンSと王者決定頂上戦への最重要トライアルとして有名なG1インターナショナルS2000m、最後のクラシックとなるセントレジャーへの最終関門G2 グレートヴォルティジューS2400mなど豪華番組で初日から盛り上がりました。起伏にとんだ草原を自然のままに生かしたコースが一般的なイギリスには珍しく、平坦に整えられた1周3200mの広大なヨーク競馬場が舞台です。幅員もたっぷりとられ長さも約1000mと長大な直線の攻防は、展開に左右されず先行馬にも追い込み馬にも平等にチャンスが生まれることから、「イギリスでもっともフェアなコース」とホースマンから賞賛されています。イギリスで最初に建造された観戦スタンドから遠くまで見渡せるロケーションは、ファンにとっても大歓迎でしょう。そうした評判の高さも手伝って、インターナショナルSを筆頭に一流馬・素質馬が集まり、非常にレベルの高いレースが繰り広げられるのが最大の魅力になっています。

そのヨークからビッグニュースが飛び込んできました。前出のグレートヴォルティジュールSでハーツクライ産駒のコンティニュアスが天晴れな勝利を飾りました。5頭立ての少頭数でしたが、3戦3勝と底を見せていない素質馬グレゴリーや、これも重賞を含め3連勝中のゴドルフィンの期待馬キャッスルウェイなど将来が楽しみな素質馬が集まりました。レースはグレゴリーがマイペースで逃げ、長い直線に入っても脚色に衰えは見えません。コンティニュアスは最後方、この位置から果たして届くのでしょうか?先に仕掛けたのはコンティニュアスの前に陣取っていたキャッスルウェイ、一気にエンジンを噴かし捲り気味にグレゴリーに襲いかかります。コンティニュアスはそれでも直ぐには動かず、一呼吸二呼吸入れて追い出し、徐々に加速しながら、どこまでも伸びて行くように確かなストライドを刻みます。見た目にも勢いが違いました。グレゴリーの無敗の夢を砕き、キャッスルウェイの抵抗もあっという間に後方に置き去りにします。つけた着差が3と4分の3馬身、ゴール前は軽く流し気味だったことを思えば圧勝です。ディープインパクトに続いて、また1頭サンデーサイレンスの血を受け継ぐ勇者が、競馬の母国で高らかに重賞勝利の雄叫びを上げました。平坦も平坦、真っ平坦のアメリカ競馬でチャンピオンに君臨したサンデーサイレンス固有のストライド走法は、平坦コースでこそ真髄を発揮するのかもしれません(イギリスから見れば、東京や中山コースも平坦のカテゴリーにくくられるのでしょう)。

次はクラシック、G1セントレジャーですね。名匠ジョン・ゴスデン調教師の薫陶を受けるグレゴリーも立て直してくるでしょうし、積極果敢なレースぶりに進境を感じさせたキャッスルウェイもこのまま引き下がらないでしょう。伏兵陣ではデザートヒーローが気になります。エリザベス女王からチャールズ3世国王へと引き継がれたこの馬は、前走G3ゴードンSで新国王に重賞初勝利を献上しています。父シーザスターズ・祖母父ガリレオ兄弟の組み合わせから、その母アーバンシー2×4のスタミナクロスを配合され、距離延びるセントレジャーでロイヤルパワーを炸裂させる期待も十分でしょう。10年ほど前にエスティメイトという牝馬が距離4000mのG1アスコットゴールドCを勝って女王を歓喜させたことがあります。女王が携わった馬は、とにかく辛抱強い頑張り屋のスタミナ自慢が多いようです。エイダン・オブライエン調教師とライアン・ムーア騎手の無双コンビが送り出すコンティニュアスは、現時点でブックメーカー各社の前売りオッズで1番人気に支持されています。朗報を待ちたいですね。

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