海外だより

日本競馬の現在地

世界各国の競馬運営の実務を遂行する統括機関を束ねる IFHA(国際競馬統轄機関連盟)から、2024年度の「ロンジン・ワールドベストレースホース・ランキング」が発表されました。ご承知のように英ダービーを制覇し、古馬相手のインターナショナルSで後の凱旋門賞馬ブルーストッキングなどを破りレコード勝ちしたアイルランド調教馬シティオブトロイ(父ジャスティファイ)、ドバイワールドカップで前年の王者ウシュバテソーロを8馬身半の大差ちぎり捨てたドバイ調教馬ローレルリバー(父イントゥミスチーフ)が、ともにレーティング128ポンドでチャンピオンの座に君臨しています。2023年の世界王者イクイノックス(父キタサンブラック)の135ポンドに比較すると、いささか低レベルな1年だったということになるのかもしれません。

しかし当時のイクイノックスは〝神懸かって〟強く、誰も近付けないほど不可侵な領域に達していました。彼は特別です。今回のランキング全体を俯瞰すれば、レーティング115以上の273頭がランキングされていますが、突き抜けた存在はなくとも層の厚みはなかなかです。中でも日本調教馬の充実ぶりは見事なもので56頭がランクインしており、これは競馬大国イギリス49頭・アメリカ43頭・オーストラリア41頭を追い越し、突き放して世界一の質と量を獲得しました。日本馬のトップは天皇賞(秋)とジャパンカップで〝神懸かった〟末脚を見せてくれたドウデュース(父ハーツクライ)の125ポンドでした。全体では5番目の評価ですが、日本調教馬トータルとしてジャッジすれば、層の厚さは胸を張れるものだと思います。

サラブレッド個々のランキングと同時にレースそれぞれの評価を集計した『G1レース・世界トップ100』も発表されています。これはG1各レースの1〜4着馬の平均レーティング(牝馬は+4ポンド)で比較されます。昨年はイクイノックスの〝威光〟もあってジャパンカップが世界一のG1レースに輝きました。今回は前述のようにイギリスのインターナショナルSが世界一の座に就いています。日本はG1レースの数そのものが少ないため、100レース以上もあるアメリカやオーストラリアと比べるのは可哀想ですが、ジャパンカップは5位、安田記念、有馬記念、天皇賞(秋)なども20位前後で頑張っており、レベル低下は感じられません。しかし層として一番ということより、やはり日本発の世界王者をこの眼で観たいのが人情です。特筆したいのは、地方主催で唯一G1グレードを獲得している東京大賞典が全体の49位に堂々ランクインしていることです。このレースを完勝したフォーエバーヤング(父リアルスティール)の世界的知名度の高さが貢献しているのは間違いないでしょうが、今年こそ、もう来月にはスタートするサウジカップ・ドバイワールドカップからブリーダーズカップクラシックへと続く世界王者ロードを先頭で走り抜けてくれないでしょうか。そんな夢のような時間が始まります。楽しみでなりません。

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