海外だより
凱旋門賞が動いた!
凱旋門賞のような世界中の関心を集めるビッグレースは、前の年のレースが終わるか終わらないかのタイミングで、もう翌年の馬券オッズが生きもののように蠢動を始めます。しかし今回は、実力馬の多くが凱旋門賞に出走資格がない騸馬(せんば)だったことから、ブックメーカー市場などは盛り上がりに欠けるのは仕方がなかったもしれません。また一方では、成長著しい上がり馬には12万ユーロ≒1920万円と超高額な追加登録料を必要とする未登録馬が目立ち、馬券を検討しようにも極めて不確定要素が多く流動的なマーケットになりました。このところ前評判が急上昇しているエイダン・オブライエン厩舎のミニーホーク、ワールなどは未だに未登録のままですね。今週開幕したヨーク競馬場の伝統のイボアフェスティバルでは、〝凱旋門賞最重要前哨戦〟として名高いインターナショナルSとヨークシャーオークスという二つのG1レースが、世界中のホースマンから熱い視線を集めますが、その効果は絶大で、ようやく有力馬たちの去就に動きが見え始めました。
レースレーティング世界一に認定された昨年のインターナショナルSは、英ダービー・エクリプスSと格上G1を連勝して来たクールモアの若武者シティオブトロイがレコード勝ち、クラシックは裏街道を歩いてロイヤルアスコットのG2キングエドワード7世Sでスターダムに乗ったアガ・カーン殿下の上がり馬カランダガンが2着に追い込み、3着に突っ込んだ伏兵ゴーストライターも3歳馬で古馬を圧倒する結果になりました。古馬勢からは牝馬路線を歩み、前走キンジョージ6世&クイーンエリザベスSで騸馬ゴリアットの2着に力走した名門ジャドモントのブルーストッキングが潜り込んでいます。これらの結果を受けて行われた凱旋門賞は、実力上位と見られていたカランダガン、ゴリアットに加えてキングジョージ3着でドバイシーマクラシックはシャフリヤール・リバティアイランドなど〝強い日本馬〟を完封していたゴドルフィンのレベルスロマンスも騸馬のため出走権はなく、シティオブトロイは米3冠馬ジャスティファイ産駒という血統的背景もあって、15年前のガリレオ以来のクールモア積年の夢を果たすため〝ダート頂上決戦〟BCクラシックに挑戦、などなど……それぞれの事情で最有力馬たちが軒並み姿を見せない中で行われました。
結果は、皮肉にも彼らの歯が立たなかった牝馬のブルーストッキングが内ラチ沿い2番手の絶好位を追走し、直線半ばで逃げ込みを図るクールモアのロスアンジェルスを競り落とすと、後方から追い込んだのがこのレースこのコースで〝日本の夢〟オルフェーブルをゴール寸前で交わし去ったソレミアと同じ勝負服・名オーナーブリーダーとして名を轟かすヴェルテメール兄弟のアヴェンチュラでした。残念ながら〝芝の最強馬選手権〟と誇りに胸を張れる内容ではなかったようです。主催者のフランスギャロでは、この騸馬出走問題を真剣に検討し始めていますが、100年以上の伝統のルールを簡単には変えられないようです。
そもそも凱旋門賞は、皇帝ナポレオンが競馬発祥の地イギリスに負けない競走馬を生み育てるために創設したグランプリというレースが母体になっています。世界最強馬をフランスから送り出すため、1920年に〝ナポレオンの夢〟を引き継いだマルセル・ブサック氏らフランスを代表するホースマンたちが奔走して創設された〝種牡馬選定レース〟というのが、そのコンセプトです。当然と言えば当然なのですが、騸馬たちはスターティングゲートから弾き出されます。
こうした歴史的背景に加えて、日本では騸馬はごく限られたマイノリティ(少数派)ですが、向こうではごく普通の存在として認められています。健全な生態系を維持するためにも必要な仕組みと考えられているからです。先週ドーヴィルのG1ジャックルマロワ賞で大金星を上げたディエゴヴェラスケスは、前走後1ヶ月の間にオーナーが代わり、去勢手術を経てビッグサプライズを成し遂げています。今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSを堂々と押し切って貫禄を誇示したアガ・カーン・スタッズの総大将カランダガンは破ったカルパナが、現在まで暫定1番人気に支持されていることからも、世界の1、2を争う実力派であることに間違いはないでしょう。昨年のキングジョージ覇者ゴリアットは凱旋門賞馬に輝いたブルーストッキングを破っての勝利でした。こうした並外れて優秀なサラブレッドたちを騸馬というだけで弾き出すのでは〝頂上決戦〟と言えないのでは、そういう指摘が巻き起こっても無理はありません。ところがサラブレッドのレースというものは、騸馬ルール以前に距離適性とか馬場適性などの問題もあり、その選択肢は多様で複雑に広がっています。先日のインターナショナルSを圧勝したオンブズマンのジョン・ゴスデン調教師も「この馬の飛び抜けて鋭い瞬発力を生かすには、稀にしか出現しない良馬場を望むのは宝くじ当選と同様の厳しさだ」と凱旋門賞出走には消極的なようです。末脚を弾けさせるには乾いた馬場の距離2000m級こそ最適と、イギリス競馬の〝生き字引〟ゴスデン調教師は考えているようです。同じ2400mを使うならロンシャンより小回りデルマーのBCターフが望ましく、それならむしろ愛チャンピオンS、英チャンピオンSの王道路線こそが相応しいというジャッジでしょうか。
さらに今回は牝馬の存在が、〝動きが鈍い凱旋門賞動向〟に大きな影響を及ぼしているようです。先ほどヨークのイボアフェスティバルが擁するインターナショナルSとヨークシャーオークスは凱旋門賞への二大登龍門と言いましたが、実際に凱旋門連覇のゴールを当たり前のように駆け抜けた〝近年最高の女帝〟エネイブルや連戦連勝で頂きへ上り詰めたアルピニスタは、このレースから最高峰の頂上へと上り詰めています。ますます存在感を深めているのは確かでしょう。この存在感抜群の牝馬レースで強い勝ち方をして、英オークス・愛オークスに続いて競馬発祥の地のオークス三冠を達成したのがクールモアのミニーホークです。主戦ライアン・ムーア騎手は、古馬相手のG1を2連勝中と底知れない実力を発揮し始めているにもかかわらず、直前に出走回避した僚馬ワールの素質を高く買い、ロンシャンの柔らかい馬場にはこちらが向くとまで言及しています。前出の暫定1番人気アルパナと互角の評価も不思議ではありませんが、こちらは凱旋門賞には未登録で1900万円余りの巨額の追加登録料が必要な身の上です。先般のサセックス賞で追加登録で出走したラビット役のキラートがG1史上空前の大穴を空けたように、何が起こっても驚けないのが競馬ですが、この馬主ゴドルフィン同様にワールのクールモアも当然のように追加登録料を払ってくるのでしょうね。馬場適性からはワールが凱旋門、ミニーはBCターフと使い分けを予測する現地メディアも少なくありません。〝動きが鈍かった〟凱旋門賞戦線ですが、この二大登龍門を震源地とするように、これから大きなうねりを伴った予測を超える動きがどんどん現れるのでしょう。期待感を高める日本調教馬勢の動向も含めて、ワクワクドキドキが高まる季節です。
レースレーティング世界一に認定された昨年のインターナショナルSは、英ダービー・エクリプスSと格上G1を連勝して来たクールモアの若武者シティオブトロイがレコード勝ち、クラシックは裏街道を歩いてロイヤルアスコットのG2キングエドワード7世Sでスターダムに乗ったアガ・カーン殿下の上がり馬カランダガンが2着に追い込み、3着に突っ込んだ伏兵ゴーストライターも3歳馬で古馬を圧倒する結果になりました。古馬勢からは牝馬路線を歩み、前走キンジョージ6世&クイーンエリザベスSで騸馬ゴリアットの2着に力走した名門ジャドモントのブルーストッキングが潜り込んでいます。これらの結果を受けて行われた凱旋門賞は、実力上位と見られていたカランダガン、ゴリアットに加えてキングジョージ3着でドバイシーマクラシックはシャフリヤール・リバティアイランドなど〝強い日本馬〟を完封していたゴドルフィンのレベルスロマンスも騸馬のため出走権はなく、シティオブトロイは米3冠馬ジャスティファイ産駒という血統的背景もあって、15年前のガリレオ以来のクールモア積年の夢を果たすため〝ダート頂上決戦〟BCクラシックに挑戦、などなど……それぞれの事情で最有力馬たちが軒並み姿を見せない中で行われました。
結果は、皮肉にも彼らの歯が立たなかった牝馬のブルーストッキングが内ラチ沿い2番手の絶好位を追走し、直線半ばで逃げ込みを図るクールモアのロスアンジェルスを競り落とすと、後方から追い込んだのがこのレースこのコースで〝日本の夢〟オルフェーブルをゴール寸前で交わし去ったソレミアと同じ勝負服・名オーナーブリーダーとして名を轟かすヴェルテメール兄弟のアヴェンチュラでした。残念ながら〝芝の最強馬選手権〟と誇りに胸を張れる内容ではなかったようです。主催者のフランスギャロでは、この騸馬出走問題を真剣に検討し始めていますが、100年以上の伝統のルールを簡単には変えられないようです。
そもそも凱旋門賞は、皇帝ナポレオンが競馬発祥の地イギリスに負けない競走馬を生み育てるために創設したグランプリというレースが母体になっています。世界最強馬をフランスから送り出すため、1920年に〝ナポレオンの夢〟を引き継いだマルセル・ブサック氏らフランスを代表するホースマンたちが奔走して創設された〝種牡馬選定レース〟というのが、そのコンセプトです。当然と言えば当然なのですが、騸馬たちはスターティングゲートから弾き出されます。
こうした歴史的背景に加えて、日本では騸馬はごく限られたマイノリティ(少数派)ですが、向こうではごく普通の存在として認められています。健全な生態系を維持するためにも必要な仕組みと考えられているからです。先週ドーヴィルのG1ジャックルマロワ賞で大金星を上げたディエゴヴェラスケスは、前走後1ヶ月の間にオーナーが代わり、去勢手術を経てビッグサプライズを成し遂げています。今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSを堂々と押し切って貫禄を誇示したアガ・カーン・スタッズの総大将カランダガンは破ったカルパナが、現在まで暫定1番人気に支持されていることからも、世界の1、2を争う実力派であることに間違いはないでしょう。昨年のキングジョージ覇者ゴリアットは凱旋門賞馬に輝いたブルーストッキングを破っての勝利でした。こうした並外れて優秀なサラブレッドたちを騸馬というだけで弾き出すのでは〝頂上決戦〟と言えないのでは、そういう指摘が巻き起こっても無理はありません。ところがサラブレッドのレースというものは、騸馬ルール以前に距離適性とか馬場適性などの問題もあり、その選択肢は多様で複雑に広がっています。先日のインターナショナルSを圧勝したオンブズマンのジョン・ゴスデン調教師も「この馬の飛び抜けて鋭い瞬発力を生かすには、稀にしか出現しない良馬場を望むのは宝くじ当選と同様の厳しさだ」と凱旋門賞出走には消極的なようです。末脚を弾けさせるには乾いた馬場の距離2000m級こそ最適と、イギリス競馬の〝生き字引〟ゴスデン調教師は考えているようです。同じ2400mを使うならロンシャンより小回りデルマーのBCターフが望ましく、それならむしろ愛チャンピオンS、英チャンピオンSの王道路線こそが相応しいというジャッジでしょうか。
さらに今回は牝馬の存在が、〝動きが鈍い凱旋門賞動向〟に大きな影響を及ぼしているようです。先ほどヨークのイボアフェスティバルが擁するインターナショナルSとヨークシャーオークスは凱旋門賞への二大登龍門と言いましたが、実際に凱旋門連覇のゴールを当たり前のように駆け抜けた〝近年最高の女帝〟エネイブルや連戦連勝で頂きへ上り詰めたアルピニスタは、このレースから最高峰の頂上へと上り詰めています。ますます存在感を深めているのは確かでしょう。この存在感抜群の牝馬レースで強い勝ち方をして、英オークス・愛オークスに続いて競馬発祥の地のオークス三冠を達成したのがクールモアのミニーホークです。主戦ライアン・ムーア騎手は、古馬相手のG1を2連勝中と底知れない実力を発揮し始めているにもかかわらず、直前に出走回避した僚馬ワールの素質を高く買い、ロンシャンの柔らかい馬場にはこちらが向くとまで言及しています。前出の暫定1番人気アルパナと互角の評価も不思議ではありませんが、こちらは凱旋門賞には未登録で1900万円余りの巨額の追加登録料が必要な身の上です。先般のサセックス賞で追加登録で出走したラビット役のキラートがG1史上空前の大穴を空けたように、何が起こっても驚けないのが競馬ですが、この馬主ゴドルフィン同様にワールのクールモアも当然のように追加登録料を払ってくるのでしょうね。馬場適性からはワールが凱旋門、ミニーはBCターフと使い分けを予測する現地メディアも少なくありません。〝動きが鈍かった〟凱旋門賞戦線ですが、この二大登龍門を震源地とするように、これから大きなうねりを伴った予測を超える動きがどんどん現れるのでしょう。期待感を高める日本調教馬勢の動向も含めて、ワクワクドキドキが高まる季節です。