海外だより

風雲急を告げるドバイ

WBCのサムライ戦士たちが、我々の想像を軽々と超えて夢のようなドラマを見せてくれました。今度はサラブレッドの精鋭たちの番です。27頭と史上最高の頭数を送り込み、その出走レースの一つ一つで大きな夢を見せてくれそうな質の高い馬ばかりです。「ドバイミーティング」が日本中の想像力を掻き立ててくれます。しかし勝負事は、なかなか思うようにはいかないものです。サウジカップが最内枠1番からダッシュを決めるや、そのまま真一文字に最短距離を駆け抜けて世界最高1着賞金1000万ドル≒13億円超を鷲づかみしたパンサラッサですが、今度は15頭立ての15番枠からのスタートになります。レースぶり同様に立居振る舞いまでが、意外性に満ちあふれた破天荒な趣きなのも、この馬らしいと言えば、この馬らしいのですが。意外性のドラマはさらに続き、昨年の覇者で名手ランフランコ・デットーリをアンジィうに迎えて本命視されていたカントリーグラマーが、付き合い良く隣の14番枠、トライアル連勝と勢いは一番の上がり馬アルジールスが13番枠、人気馬が揃いも揃ってメイダンでは不利とされる外枠に入り、勝負の行方は俄(にわ)かに風雲急を告げて来ました。

スタートして、ほどなく1コーナーを迎えるメイダン競馬場のダート2000mは、内枠の先行馬が圧倒的にアドバンテージを握っており、外枠は鬼門と忌み嫌われるほどです。厳しい競馬を覚悟しなければなりません。海外の一流騎手はコースどりに非常にシビアですから、やすやすと内に潜り込むのは、ほぼ無理です。おまけに先行できないと、強烈なキッバックの洗礼を受け、戦意喪失しかねない砂の嵐を浴びることになります。今年は日本調教馬が8頭と史上最高のラインナップが実現しましたから、チームワークで何とか進路を確保できないものか?そんな思いもあります。しかし日の丸を背負っているのは共通ですが、それぞれ馬主も違えば厩舎もバラバラです。おまけに鞍上のほとんどは外国人騎手ばかりですから、戦略や戦術を徹底させる意味で言葉の壁もありそうです。このあたりも日本調教馬が世界と戦っていく上で、避けては通れない課題かもしれません。WBCで侍ジャパンの優勝に貢献した通訳の水原一平さんのような存在が、戦略的な複雑さを要求される今後は欠かせないでしょう。

ワールドカップ以外も、シーマクラシックで敢えて海外に打って出たイクイノックスは断然の支持を集めているようです。日の丸を背負うと同時にモハメド殿下に忠誠を誓うレモンポップは複雑な立場ですが、二つの夢を叶えてくれると思います。日本での馬券発売がないのは残念ですが、AEUダービーには2歳G1ホープフルSを制覇したドゥラエレーデが、日本ダービーとケンタッキーダービーを両天秤にかけてチャレンジします。どのレースも見逃せません。今週末も素晴らしい夢をたっぷり堪能できそうです。

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