ゲスト 内田玄祥オーナー

02. ちょっとでいいから儲かったら嬉しい…それが、長く競馬を楽しむコツです

ちょっとでいいから儲かったら嬉しい…それが、長く競馬を楽しむコツです
自家生産馬のイロゴトシが中山グランドジャンプを連覇。キャプテンが白派の矢を立てた内田玄祥オーナーのもうひとつの魅力は……ユニークで、下ネタギリギリのオモシロ馬名。ネーミングの由来は? ファンからのお叱りは? 笑いを交えながらスタートした『G1オーナーに乾杯』後編は、内田流競馬オーナーの楽しみ方にスポットを当てる。

リャクダツアイは、さすがにマズイ?

――イロゴトシに代表されるように、内田オーナーといえば、ハイセンスというか、ユーモア溢れるというか、ギリギリの下ネタといいますか(笑)、面白い馬名をつけることで知られていますが。

内田ははははは。やっぱり、話題はそこにいきますよね。でも、最初は、百人一首から取ったり、源氏物語から取ったりしていたんですよ。カイアワセという名前もそのひとつで。雅な名前にしようとつけたんですが、登録した後に、あれ!? ちょっと、待てよと……となって。でも、もうどうにも出来ないので、まぁ、いいかと(笑)。それでも、オープンまで行きましたからね、立派な馬です。

――由来を伺うと、そうか、そういうこともあるのかと思いますが、他にも、理由はあるんですか?

内田私が馬主になったのが、馬券が全然売れない時代だったというのもあります。中央競馬もそうなんですが、特に、地方競馬場なんかがどんどん廃止されていった時期で、今でもよく預託している高知や笠松なんかも風前の灯火といった状態でした。私が面白い名前を付けることで、それが話題になって、競馬が注目され、ちょっとでもいいから馬券が売れるようになったらいいな、という思いもあったんですけどね、“ふざけている”というお叱りの言葉もずいぶん、いただきました(苦笑)。

――バクニョウ、オトナノジジョウ、ヨウエン、ホストという馬名もなかなかですが(笑)、リャクダツアイという名前を見たときは、正直、「おい、おい、大丈夫か?」と心配になりました(笑)。

内田でも、リャクダツアイは、名前はともかくモーリスの半妹なんですよ。

――えっ、良血じゃないですか!

内田兄に免じて、許してもらえればと思います(苦笑)。

――そういう遊び心があってもいいと思いますし、僕は好きです(笑)。

内田馬名が気に入り、それでファンになってくれて、引退後、馬を引き取りたいと言ってくださる方もいるので、お叱りはごもっともですが、広い心で見守っていていただければ嬉しいです。

現役馬は、中央が11頭、地方が23頭

――イロゴトシは、自家生産馬ということでしたが、セリで購入されることもあるんですよね。そういうとき、購入の決め手になるのは?

内田基本的には、調教師の先生にお任せですね、自分じゃわからないですから。で、この馬がいいと思いますよと勧められたら、あとは予算と相談して、私自身が最終決断をする感じです。

――予算というのは?

内田未勝利1勝の賞金、車一台買えるくらい……上限500万円くらいで、絶対に無理はしないようにしています。

――イロゴロシの賞金で、ちょっと無理すれば高い馬も買えます。そういう気持ちにはならないんですか。

内田どっちがいいというのはないんでしょうが、私は、比較的リーズナブルな馬を何頭か持っているのが好きですし、その方が、楽しめるんじゃないかと思っています。

――現在、何頭くらい所有されているんですか。

内田2歳馬を入れると中央で11頭。地方はその倍以上、23頭います。

――それは、すごい!地方は南関東ですか。

内田南関東でも走っていますし、名古屋、笠松、高知でも走っています。

――高知はいま、すごく勢いがありますもんね。廃止の一歩手前から復活して、いまや、南関東の次にいいんじゃないかと思うくらいです。

内田最初に高知に預けたときとはまるで違います。預託料が8万円くらいで、賞金も同じくらいの額だったのが、今じゃ、その10倍ですからね。すごいですよ。

――中央だろうが、地方だろうが、平地だろうが、障害だろうが、勝ってくれる馬は、全部、親孝行な馬ですよね。

内田本当にそう思います。特に私の場合、趣味と呼べるのは競馬以外にないし、安い馬しか持っていないので、1勝する喜びは、何物にも変え難いものがあります。

――ズバリお聞きします。それだけの馬を所有して、収支は、少しマイナスですか、それとも、大きくマイナスですか?

内田プラスですか、それとも、マイナスですかと訊かないところが、さすが、キャプテンです(笑)。

――競馬のオーナーさんで、儲かって、儲かってしょうがないという人の話は聞いたことがないもので(苦笑)。

内田私の場合は、補助金とか見舞金とかをフルに活用し、そこにイロゴトシの賞金が加わったので……トータルで考えると、トントンというところです。

大切なのは、無理をしないこと

――これから馬主になりたいと思っている人にアドバイスを送るとしたら、内田オーナーなら、どういった言葉をかけますか。

内田セリでは、2億、3億という大きなお金が普通に飛び交い、現実離れした世界に見えるかもしれませんが、そうじゃない楽しみ方もありますよ……というのは伝えたいと思います。

――車一台分のお金でも楽しめる?

内田高い馬というのは、それだけ走る可能性が高いというのはもう、間違いのない事実です。でも、そこに絶対はないし、安い馬でもそこそこ走る馬は何頭とかいます。で、運がよければ重賞に出られる馬もいるし、さらに運がよければ、そこで勝っちゃったりもします。さらに、さらに、最高に運がよければ、イロゴトシのように大きなタイトルを取ってくれる馬も現れる……かもしれないです(笑)。

――馬で儲けようとしちゃダメだと。

内田大儲けしようと思って手を出すと、逆に失敗するような気がしますし、競馬が楽しくなくなるような気がします。
ちょっとだけ儲かったらいいな――。
それくらいの気持ちでやったら競馬を楽しめるし、オーナーになって良かったと思えるような気がします。

――欲は掻くなということですね。

内田そうです。それで運が良ければ、200万で買った車が、高級車に化けることもありますから(笑)、そうなれば十分に元は取れるし、さらに競馬が楽しくなる。こんなにいい趣味はないと思います。

――いい牝馬がいたら、自家生産も出来ますしね。

内田今年、9頭、自家生産をしましたが、セリで馬を買うのとどっちがいいのかは、一概には言えません。
というのは、セリの場合、自分が、これだ!という馬を買えますが、自家生産の場合、ちっちゃく生まれてくる仔もいれば、脚が曲がったまま生まれてくる仔もいますからね。

――そうかか、自家生産にはそういうリスクもあるんですね。

内田そういうリスクを含めても、私は自家生産の方が面白いと思っていますが、そこは人それぞれ、自分に合ったやり方で楽しめばいいんだと思います。

――無理をせず、予算内で、ですね。

内田そうです、そうです。無理をしないことが一番大切なことだと思います。

(構成:工藤 晋)

今回のインタビューでは、牧田厩舎特製イロゴトシのジャケットを着ていただきました。

内田玄祥 うちだ・げんしょう
1974年生まれ
2013年、中山馬主協会入会。
医療法人 幸のめばえ、社会福祉法人 幸のきずな理事長。
長崎大学卒業、妻は福岡県出身、はじめて行った競馬場は佐賀競馬場。九州との縁で九州産馬を応援。

キャプテン渡辺
1975年10月生まれ
お笑い芸人。競馬、競輪、パチンコ、パチスロは趣味の域を超えていまや生活の一部に。特技は関節技。現在テレビ東京系列で放送中の『ウイニング競馬』にレギュラー出演中。YouTubeで競馬予想更新中

※この記事は 2024年6月14日 に公開されました。

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