ゲスト 内田玄祥オーナー
01. 自家生産で生まれ、V2を成し遂げたイロゴトシに、乾杯!
イロゴトシで、J・G1中山グランドジャンプを連覇した、内田玄祥オーナー。誕生秘話から、これから目指す道まで、余すところなく語ってくれた内田オーナーの口から飛び出したのは……。稀代の障害馬、オジュウチョウサンがターフを去った障害レースを引っ張るのは、この馬しかいない。
確信はありませんでしたが、
去年よりは期待していました
――中山が誇るJ・G1中山グランドジャンプの連覇、おめでとうございます! 内田玄祥オーナーに、乾杯です!!
内田ありがとうございます。
――愛馬のネーミングから、どんな方だろうとあれこれ想像していましたが、想像してよりはるかにお若くて、爽やかなのには驚きました。
内田私は昭和49年生まれで、キャプテンは――。
――50年なので、内田オーナーがひとつ上。その年齢で、ビッグタイトルを2年続けて手にされたのは、本当にすごいし、うらやましすぎます。
内田去年、勝った後、夏負けで体調を崩し、それが尾を引いた結果、ちょっと無理をして使ったJ・G2東京ハイジャンプで惨敗。目標にしていた暮れの中山大障害も回避するしかなくなり、「イロゴトシは、重馬場でしか勝てないんじゃないか!?」とまで言われていましたからね(苦笑)。勝ててホッとしています。
――あの惨敗がなければ、僕も勝負していたと思うんですけど……。終わってみれば、イロゴロシが勝ったのは当然の結果で、なんでイロゴトシの馬券を敬遠しちゃったのか、激しく後悔しました(苦笑)。
内田はははははっ。それは、残念でした。
――内田オーナーは、勝つ気満々で、レース前に、連覇を確信していたんですか。
内田相手も強いですし、正直、どうかな?という気持ちもありましたが、調教師の牧田和弥先生が、「いきましょう!」と力強くおっしゃったので、去年よりは期待していました。
――結果は、昨年同様、圧勝でした。
内田今年は、最後、少しヒヤッとする場面はありましたけど、馬が頑張ってくれました。牧田調教師、黒岩(悠)騎手、スタッフの皆さんに感謝です。
欲張らず、謙虚に、謙虚に――
――これまで、中山グランドジャンプを連覇したのは、ゴーカイ、カラジ、オジュウチョウサンの3頭だけ。その仲間入りを果たしたイロゴトシの次の目標は?
内田最終的には牧田調教師の判断になりますが、秋の目標は、昨年、出走できなかった中山大障害だと思っています。
――出走すれば、1番人気、確実です。
内田もしも、そうなれば、イロゴトシは、はじめて1番人気でレースを迎えることになるんですよね。
――えっ!? これまで、一度も、1番人気になっていないんでしたっけ?
内田はい。31戦していますが、1番人気は一度もないです。1番人気になったからといって、勝てるかどうかはまた別の問題ですけど、でも、そうなったら嬉しいですよね。
――中山大障害までのローテーションは、どうするんですか。
内田去年は、ちょっと欲張った結果、中山大障害を使えなくなってしまったので、今年は、謙虚に、謙虚に、です。
――謙虚と言うのは……馬の体調次第では、無理をさせず、中山大障害に直行という選択肢もあるということですか。
内田選択肢はたくさんあった方がいいですし、その中から、牧田先生が、ベストな選択をしてくれると思います。
――とはいえ、理想はやはり、昨年同様、平地を一回使って、本番だと思いますが。
内田理想は、やっぱり、そう……なるんでしょうね。
――叩き台となる平地の馬券は、さすがの僕も買えないですけど(笑)、本番、中山大障害は、今度こそ、大勝負しますよ。
内田みなさん、そう言いますが、京都新聞杯で5着したように、3歳の頃から、牧田先生とも、距離は長ければ長いほどいいよねと話していたので、私個人の思いとしては、期待も含めて、ひょっとしたら、ひょっとするかもしれませんよ(笑)。
――そうやって、僕を惑わすようなことを言うのは、やめてくださいよ(苦笑)。平地も買って、障害も勝つなんて、それじゃ、まるで、オジュウチョウサンじゃないですか。
内田それはないです。オジュウチョウサンはすごすぎますよ。
まずは…目指せ!カラジ!!です。
――暮れの中山大障害を勝ったら、国内に敵はいなくなります。そうなったとき、戦うフィールドを海外に求めるという道もあると思いますが、そういう考えは?
内田イロゴトシは、経験したことのない競馬場がダメなんですよ。状態はよくても、物見して、結果を残せない。そうなると、腰を据えてということになるので、海外で勝負するというのは、ちょっと難しいのかなと思います。
――障害馬のトップ3に挙げられるゴーカイは9歳。カラジは13歳。オジュウチョウサンは11歳まで走っています。イロゴトシはいま、7歳ですから、まだまだ、走れますが、海外が難しいとなると、どこが目標になりますか。
内田中山グランドジャンプを5連覇、数々の障害記録を塗り替え“絶対王者”と呼ばれるオジュウチョウサンは、あまりにも偉大すぎて、尻尾の先も見えないので、まずは、中山グランドジャンプを3連覇したカラジです。目指せ、カラジです。
――下世話な話になりますが(笑)、中山グランドジャンプの1着賞金は、6600万円。連覇で、1億3200万円。NHKマイルカップ、ヴィクトリアマイル、エリザベス女王杯の1億3000万を超えます。
内田少ない予算で競馬を楽しんでいる人間にとっては、イロゴトシのような馬が出てくるのは本当に有り難くて……ほんと、親孝行な馬です。
――イロゴトシは、どこセリで購入された馬なんですか。
内田セリじゃなくて、自家生産です。
――自家生産!?嘘でしょう?
内田クロフネを父に、サドラーウェルズを母父に持つ牝馬のイロジカケを200万で購入して。結局、1勝もできずに現役を終えたんですが、そのイロジカケを、熊本の本田(土寿)牧場に預け、ディープインパクトを父に持つヴァンセンヌの種を付けて、生まれたのが、イロゴトシです。
――マジ…ですか?
内田はい。ですから、費用は、イロジカケの預託料と、種付けのためのお金、10万円くらいだった思うんですけど、それだけですね。
――すごい!すご過ぎます!! まいりました(笑)。
(構成:工藤 晋)
内田玄祥 うちだ・げんしょう
1974年生まれ
2013年、中山馬主協会入会。
医療法人 幸のめばえ、社会福祉法人 幸のきずな理事長。
長崎大学卒業、妻は福岡県出身、はじめて行った競馬場は佐賀競馬場。九州との縁で九州産馬を応援。
キャプテン渡辺
1975年10月生まれ
お笑い芸人。競馬、競輪、パチンコ、パチスロは趣味の域を超えていまや生活の一部に。特技は関節技。現在テレビ東京系列で放送中の『ウイニング競馬』にレギュラー出演中。YouTubeで競馬予想更新中。