ゲスト (有)サンデーレーシング代表 吉田俊介氏
02. 一頭、一頭、すべての馬にタイトルを取らせてあげたい
JRA・GI完全制覇
――高松宮記念の優勝で、サンデーレーシングは、馬主として史上初となるJRA・GIレース全26競走を完全制覇です。これは、とんでもない大記録ですよ。
吉田周りから言われるまで記録には全然、気づかなかったんですが(苦笑)、中山グランドジャンプ、中山大障害という、中山競馬場が誇る2つの障害競走も含まれているところがすごいですよね。
――そんな、他人事みたいに、冷静に言わないでくださいよ。大・大・大・大・大・偉業なんですから。
吉田クラブ法人『サンデーレーシング』を立ち上げたのが、2000年で。当時は、走らせても、走らせても、勝てなくて。会員の人に、申し訳ない気持ちでいっぱいだったことを思うと、感慨無量のものがありますね。
――はじめてGIを勝ったのは?
吉田サンデーレーシングを立ち上げて4年目。中山大障害のブランディスです。ブランディスは、続く中山グランドジャンプでも勝ってくれて、クラブにとっては、救世主のような存在でしたね。
――その次が、04年、デルタブルースの菊花賞です。
吉田会員のみなさんと祝勝会をやって。はじめての平地GI、はじめてのクラシック……やっとというか、遂にというか……もう、言葉にならないくらい嬉しかったですね。
――さらに、06年、ドリームジャーニーの朝日杯、07年、ヴァーミリアンのジャパンカップダートと続きます。
吉田ディープインパクトが三冠を制覇した05年はGIをひとつも勝てなかったけど、重賞を勝つ馬がたくさん出てきて……。
――08年に阪神ジュベナイルフィリーズ、09年に桜花賞、オークスを勝ったブエナビスタが、続く10年に、ヴィクトリアマイル、天皇賞(秋)を制し、年度代表馬に選出されました。
吉田設立当時を振り返ると、夢のような話で、なんで勝てないんだろうと悩み続けていた当時の僕に、10年後、年度代表馬が出るから頑張れと、囁く人がいても、絶対に信じなかったと思う(笑)。
怪物、名馬の名前がズラリ
――クラブの快進撃は、ここからです。11年にはオルフェーヴルが三冠を達成。翌12年には、ジェンティルドンナが、桜花賞、オークス、秋華賞、ジャパンカップを制し、ブエナビスタから3年連続で年度代表馬を輩出。サンデーレーシングの凄さを不動のものにしました。
吉田13年に、フェノーメノが天皇賞(春)を勝ってくれて、八大競走を制覇。オルフェーヴルと、ジェンティルドンナは、顕彰馬にもなっているんだよね。いやぁ、すごい。一頭、一頭、それぞれ携わってくれたみなさんに感謝です。
――通算76勝で、16年から19年連続のGI勝利。中山が誇る有馬記念を、ドリームジャーニー、オルフェーヴルが2度、ジェンティルドンナ、クロノジェネシスと5度も勝っているんですよ。
吉田ありがとうございます。
――さらに、ですよ。中山が舞台の皐月賞も5度、日本ダービーを4度制覇。これは、どうしたことですか。
吉田どうしたことって言われても(苦笑)。みんなが頑張った結果ですからね。僕からは、ありがとうございますとしか、言いようがないかな。
――さらにその上をいくのが、7勝している阪神ジュベナイルフィリーズです。ブエナビスタからはじまって、レーヴディソール、ジョワドヴィーヴル、メジャーエンブレム、ラッキーライラック、リバティアイランドときて、昨年はアスコリピチェーノです。どうやったら、こんなに強い馬が作れるんですか? その秘密を教えてください。
吉田2つのトレーニングセンター、ノーザンファーム天栄とノーザンファームしがらきが大きいと思います。すぐに結果が出たわけじゃないですけど、レースとレースの合間の管理を自分たちでやれるようになって、いい状態で調教師さんにお渡しできるようになって、歯車がいい方向に回転し出したんじゃないかと思います。
20年後を考えると怖いような気もします
――高松宮記念で、JRAのGIを完全制覇。さぁ、この先は、どうしましょう? 海外……凱旋門賞、ケンタッキーダービー、ブリーダーズカップになりますか。
吉田海外の競馬は、狙って取りにいった方がいいと思います。思いますけど……僕にとっては、日本の競馬もそれと同じくくらい大事です。クラブの馬、一頭、一頭、全てにタイトルを取らせてあげたいし、そのためには、きちんとしたローテーションを組んで、目の前のレースに集中できる環境を作ってあげないといけない。まずは、そこからです。
――サンデーレーシングは、1頭につき40口の募集ですが、コロナ禍では、大変だったんじゃないですか。
吉田そう、思いますよ!? 僕も、さすがに、全部は売れないんじゃないかと心配していたんです。ところが――。
――もしかして、全部、売れちゃったとか!? 嘘でしょう?
吉田コロナ禍が逆に幸いしました。しかも、キャロット、とシルクはそれ以上で。一次募集で満口になったと聞いています。
――宣伝は、ほとんどしていないんですよね?
吉田みんなが欲しくなるような馬を作って、育てる――。やっているのは、それだけです。
――はじめてのGIタイトルから20年。さらに20年後の2060年……日本の競馬はどうなっていると思いますか?
吉田馬の能力は間違いなく以前より高くなっていると思います。馬場の改良で、水捌けも良くなっているだろうし、時計は早くなっているはずです。ただ、その一方で、どんどん時計が早くなるのは、ちょっと怖いと思う自分もいます。
――それでも対応していくしかない?
吉田逃げられないし、逃げちゃいけない。馬を大事に、馬優先で、これからも、いい馬を作って、育てていくのが僕の使命だと思っています。
(構成:工藤 晋)
吉田俊介 よしだ・しゅんすけ
1974年4月13日生まれ
(有)サンデーレーシングの代表で、ノーザンファームの副代表。
キャプテン渡辺
1975年10月生まれ
お笑い芸人。競馬、競輪、パチンコ、パチスロは趣味の域を超えていまや生活の一部に。特技は関節技。現在テレビ東京系列で放送中の『ウイニング競馬』にレギュラー出演中。YouTubeで競馬予想更新中。