ゲスト 青山洋一オーナー
02. もう一度…G1オーナーに乾杯!

馬主は儲からない?
――青山さんが馬主になられたきっかけはなんだったんですか。
青山仲間と銀座で飲んでいたとき、たまたま、横の席に座っていたのが、ノリちゃん(横山典弘)たちで。紹介されて話を聞いたら、一流のジョッキーだっていうから、馬主って儲かるのかって聞いたのが、そもそもの始まりでしたね。
――ちょっと待ってください。ということは、それまで競馬は知らなかった?
青山申し訳ないんだけど、まったくといっていいほど知らなかったし、興味もなかった。競馬で知っているのは、武豊の名前くらいで。えっ!? 横山典弘!? 誰だ、それ? という感じだったんだよね(苦笑)。
――で、ノリさんが、馬主は儲かるって言ったんですか?
青山ううん。儲からないよって。
――それでも、馬主になったんですか?
青山ちょっと違う。
儲からないっていうから、ちょっと待てと。もしも、俺が馬主になって、いい馬を買って、一流ジョッキーの横山典弘が乗ったら勝つんじゃないのかって聞いたら――。
――ノリさんは何と?
青山飲みの席だったからね、向こうも、“何だ、この偉そうなおっさんは?”くらいに思ったんじゃないかな。「おう、そうなったらね」と、そっけない返事で。カチンときたから、「よぉし、わかった。馬主申請書を送れ」って、啖呵を切っちゃったんだよね(苦笑)。
――それで…馬主になっちゃった?
青山うん、そう。ただ…調べてもらえるとわかるんだけど、最初の5年間くらいは、たまに乗ってもらっていたんだけど、その後15年は、一度も、ないんだよね、ノリちゃんに乗ってもらったことが(苦笑)。
――意味がわからないです(笑)。
青山今でも、顔を合わせれば、普通に挨拶もするし、話もするんだけど……。何でだろうね。僕にもわからない(笑)。
周りから、バカ扱い?
――馬主になったきっかけはともかく、軽い気持ちではじめて、ダメだったらやめればいいやくらいの気持ちだった?
青山その通りなんだけど。初年度に15億も使っちゃって(苦笑)。
――じ・ゅ・う・ご・お・く? マジ…ですか?
青山当時は、無知の塊みたいなものだから、高い馬を買って、一流と呼ばれる調教師に預けて、一流と呼ばれるジョッキーに乗って貰えば、5年で、全部のG1を勝てるんじゃないか、くらいに思っていたんだよねぇ(苦笑)。
――そうは…いかないですよね。
青山うん、いかない。それほど競馬は甘くない。
――それでも、馬主をやめなかったのは?
青山みんなに、バカ扱いされたからかな。
――えっ!?
青山税理士や公認会計士からは、「もしかして儲かると思ってます?」って言われるし、社員からは、「何がしたいんですか?」とか、「何が楽しんですか?」って聞かれるし…もう、完全にバカ扱いなわけです(苦笑)。
――はははははっ。それは、ちょっと、ひどい。でも、普通の人ならめげるけど、青山さんの場合は、その言葉で、逆に、火が付いたってことですね。
青山わかってるねぇ。そう、その通りで。
最初の5年はそういうことがあって、自分とも周りとも葛藤しましたが、絶対に匙を投げるのだけはやめようと思って。バカ扱いされたまま、やめてたまるかとも思ったし。一度、始めた以上、結果を残すまではやめられない、やり続ける――。そこで腹を括りました。
――そこから、変わりました?
青山変わりましたね。まず、お金で勝てるとは思わなくなりましたから。
馬主という立場からすると、勝てないということは、みなさんが思っている以上に屈辱なんですよ。メンタル的にものすごく萎える。1番人気の馬がシンガリ負けとかになると、もう、全身の力が、ふぅぅぅぅぅぅーっと抜けて、立ち上がれなくなるほどショックで、人を呼ぶのが怖くなる。
――それって、どういうことですか?
青山最初は、「今度、オレの馬が走るから見に来いよ」とか、知り合いを呼ぶじゃないですか。そこで馬が走らないと、会話がなくなって、お通夜みたいな空気になるんですよ。で、「明日、早いので失礼します」とか言って、1人帰り、2人帰り…気がつくと誰もいなくなっていて……。
1回ならまだしも、それが、2回、3回と続くと、来てくれた人に、申し訳ないという気持ちでいっぱいになるんですよね。
――僕からすると、功なり名を遂げた人が馬主になれるわけだから、馬が走らなくてもいいじゃないって思っちゃうんですけど…違うんですね。
青山それはない。馬が負けると、みなさんが思っている以上にショックだし、もっというと、自分が想像していた以上にショックなんですよ。
青山洋一は生涯、馬主です
――本業と競馬。気持ち的にはどういう割合ですか?
青山基本は仕事が優先ですよ。でもね、週末、めちゃめちゃ楽しみな新馬戦があるときは、一応、仕事はしているんだけど、つい、つい、想像しちゃって、どうしても気持ちはそっちに行っちゃうかな。
――馬が勝っているときは、ビジネスも上向く?
青山それは、一概には言えないな。気持ち的には乗ってくるけど、ビジネスはまた別だから。ただ、馬もビジネスも、好調だと人は寄ってくるし、ダメなときは人も寄って来なくなる。距離感がわかるし、その波がわかりやすいというのはあると思う。
――シャンパンカラーのNHKマイルカップのように、勝つ予感がするときっていうのは結構、あるものなんですか。
青山勝ちそうな気がする…というのは、結構、あるかな。
――そういうときは、本当に勝つ?
青山そうでもない(笑)。気がするっていうのは、ほとんど願望みたいなものだから。勝つときは、勝てそうな気がするじゃなくて、「今日は勝つ」と。そう思ったときは、本当に勝つよ。
――逆は?
青山逆もまた真なりで。圧倒的な1番人気なんだけど、なんか、負けそうな気がするときっていうのは、100%とは言わないけど、ほぼ、負けます(苦笑)。
――これだけは勝ちたい!というG1はありますか?
青山ないです。出来るなら、全部、勝ちたい。
――全部勝ったら、馬主をやめてもいい?
青山ここまで来たら、そういう問題じゃないですね。ここまでやって来たってことは、神様がやめるなって言っていることだと思うので。G 1は全部、勝ちたい。勝ちたいけど、勝てたとしても、それでも、一生馬主です。
――最後に、オーナー青山洋一として、これからの目標を教えてください。
青山目の前のレースを勝つことですね。まずは、1勝。それが朝一番のレースであっても、メインレースであっても、勝つことの喜びを知ってしまったので、それ以外はないです。
――馬主になった当初とは真逆ですね。
青山それくらい勝ったときの喜びは大きいってことです。あの嬉しさは、一生忘れられないと思うので、馬主はやめません。死ぬまで、青山洋一は、馬主です。
――最後に、もう一度だけ、シャンパンカラーの勝利に……乾杯させてください。
青山ありがとう! じゃあ、もう一度……乾杯!!
(構成:工藤 晋)


青山洋一 あおやま・よういち
1964年生まれ 島根県出身
2016年に愛馬ジュエラーが桜花賞を優勝。2023年、シャンパンカラーでNHKマイルカップを制する。
中山馬主協会 副会長。ホームページを担当する広報委員長時代に、『キャプテン渡辺のWINNER’S CIRCLE』を創設。

キャプテン渡辺
1975年10月生まれ
お笑い芸人。競馬、競輪、パチンコ、パチスロは趣味の域を超えていまや生活の一部に。特技は関節技。現在テレビ東京系列で放送中の『ウイニング競馬』にレギュラー出演中。YouTubeで競馬予想更新中。
