競馬、波乱万丈著名人に聞く、競馬と私

第4回:草野流馬券術、競馬の未来

競馬会の年間売上高は平成9年の4兆円をピークに下落傾向が続いています。草野さんが描く、競馬会の未来のありかたとは? 最終回の今回は、草野さんの馬券術と競馬会の未来像について伺いました。
  • 草野 仁さん

——今度は馬券の話をお伺いしたいのですが、草野の流馬券術と言いましょうか、草野さんの馬券を買うときのポイントを教えていただけますか?

草野むかしから基本は変わってませんね。
まず、出走している頭数を全体的に見渡します。じっくりパドックで観察して、「状態がよくできあがっているな」「気合の入り方が違うな」と、そういう馬をピックアップしていきます。それで、最終的にどの馬を軸にするか1頭選びます。その馬から、馬連もしくは馬単で楽しんでいますね。

3連複、3連単の配当の妙味は捨てがたいものがあるので、ときどきチャレンジしますが、どちらかと言えば、馬連、馬単という昔風の馬券を楽しむタイプです。

——馬券を買う楽しみというのは、どういうところにあると思いますか?

草野自分が「これだ!」と思って、その馬の過去の成績やパドックも含めて検討しまして。その馬が、いい形でレースをしてくれて、思い通り1着か2着に来てくれる。それがたまたま専門紙を見てもあまり注目されていなかったりしたときは、無上の喜びを感じますね。

「オレは天才的な相馬眼があるんじゃないか!」と自分で思ったり(笑)。そう自分のことを思えるというのは、楽しいものだと思うんですよね。

——各競馬場で、どの競馬場が馬券成績がよいですか?

草野以前は東京で、中山は意外に駄目だったんですが、中山馬主協会に入りましてからは、中山がいいです(笑)。
中山競馬場は気分が落ち着くというか。東京は改修前のときは、パドックが4階のテラスの所でとても見やすい位置だったのですが、新しくなってから、パドックがとても見づらくなった。

パドックが見られる中山の馬主席は最高ですね。中山競馬場の馬主席の上から見る高さが、全体を見やすくて大好きです。

施設としても、中山競馬場はやっぱり寒い時期の開催が多いということもあるのでしょうか非常に室温のコントロールが効いていて、居住性がとてもすばらしいですね。

東京は馬主席も、外に出されてますから日をもろにうけて暑いんですよね。風の強い日は大変ですし。全体を見渡しても私は中山が大好きですね。中山馬主協会に入れていただいてよかったなと思っております(笑)。

——馬券以外も含めて、中山競馬場でおすすめの場所はございますか?

草野極端にここ、というポイントを決めているわけではないのですが、馬主席とパドックをしょっちゅう行き来しています。

以前どなたかが、パドックをきちんと見て歩くのは健康によいとおっしゃっていまして。しょっちゅうパドックと馬主席を行き来していますね。

——その姿を、よく拝見しております(笑)。

草野私はレース後の余韻にあまり浸らない方で、レースが終ったらすぐにパンと席をたってパドックに向かい、次のレースを検討していますね。

競馬会の夢、未来、希望

——最後に競馬会の現場についてお聞きかせください。競馬会の年間売上高は平成9年に4兆円をピークに、下落傾向が続いています。競馬会でも何とか打開策をと思い、いろいろと打ち出してはいるのですが、思うように回復してこないのが現状です。

馬主として、そしてファンとして競馬会への提言を語る草野仁さん

草野いや、私はもっともっと競馬の良さをアピールしていけば、ある程度のところまでは回復していくと思ってます。これだけ素晴らしい施設ハードを持っているわけですから。

——草野さんから見て、違った角度からのアプローチといいましょうか、こうした方がよいのではと感じることはございますか?

草野私は思うのですが、たとえば中山競馬場というものを競馬のための施設としないで、法律的に改正や規制改革が必要なのかもしれませんが、たとえば宿泊もできるような施設、あるいは競馬場全体の一角で競馬に関する映画は常時上映しているとか、あるいは、子どもたちが競馬の歴史を調べるのにミュージアムがあって疑問にも答えてくれたりだとか。

もっと競馬場を総合的な施設として生まれ変わらせるというかそういうことが必要なんじゃないかなと思いますね。

たとえば、競馬場内に一般の方でも打ち合わせができる立派な応接室があるとか。もっと総合的に人と人との出会いの場として、競馬場を活用したらどうかなと。

——なるほど。

草野それを思ったのが20年以上前にアスコット競馬場へ行ったときですね。驚いたのは、ミュージカルのマイ・フェア・レディの世界で、キレイな紳士淑女がたくさん集まっていて。
彼らが何をしているのか見ていると、競馬場にあるテーブルに座り、おしゃべりをしながら、食べたり飲んだりしているんですね。馬券は「競馬がやっているのでたまには買ってみようかしら」程度で、競馬場がまさしく社交場になっているんです。

日本の競馬場も、まさしくそういう役割も果たせる場所であってもいいなと思いますね。競馬を開催しているときだけに、あれだけ立派な施設があってあとは何も使わないというのはもったいなさすぎます。

宿泊もできる映画も見られる、場合によっては結婚式だって挙げられる、そういう総合的に活用する出来る場として競馬場に人々が行き交う。競馬があまりできないという人でもちょっと行ってみたくなるような施設、人を惹きつける場所に競馬場を変えていくのが必要なんじゃないかなと。

——非常に貴重なご意見、ありがとうございます。

草野お前はどういうときが幸せかと言われたら、朝早く競馬場へ行って、馬主席から緑の芝生を見下ろしていると、それだけで疲れがとんでいくとか、そういう気分になれるんですね。競馬場はそういう力をもったところですので、そういう形で多くの人達が寄り添い、人が集まる場に競馬場がなればよいなと思いますね。■

草野 仁:1944年満州・新京生まれ。1967年東京大学文学部社会学科卒業。同年NHK入社、1977年にNHK東京アナウンス室へ異動。主にスポーツ・キャスターとして、さまざまなスポーツの実況中継を担当。1985年に退社後は、フリーのキャスター、テレビ番組の司会者として活躍中。TBS「世界ふしぎ発見!」は放送開始から25年を超える長寿番組である。