海外だより

競馬の進化と変化を考える

今週末は1着賞金〝世界一〟1000万ドル≒14億9000万円と飛び抜けたインパクトで、瞬(またた)く間にワールドクラスの一級レースの輝かしい勲章を首から下げたサウジカップが行われます。毎年におように日本馬の活躍が目立つ国際レースで、ファンの注目度も高く、今年はJRAから国内馬券発売も行われます。

サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場を舞台とする日本馬の世界雄飛ドラマは、もちろん背景には地道な日本馬の生産・育成・調教技術の日進月歩の〝進化〟もあるんでしょうが、キングアブドゥルアジーズ適正というか、馬場の〝変化〟が影響しているという指摘も少なくありません。コロナ禍が世界にお蔓延し始めた2020年の創設ですが、その災難にも負けず粘り強く開催が持続されましたが、メインのサウジカップの全体的印象を言えば、明らかに芝ホースにもポテンシャルを爆発させられる馬場でした。第2回に仏ダービー馬ミシュリフが、デビュー以来というもの無敗街道を突っ走りG1を2連勝中だった〝ダート帝国〟の快速馬シャーラタンを直線勝負で素晴らしい集中力を発揮して競り落としています。この10年足らずに40年近く途絶えていた米三冠馬の栄光の座にアメリカンファラオ、ジャスティファイと2頭を立て続けに送り込んだ〝ダート競馬の盟主〟ボブ・バファート調教師が手塩にかけた素質馬を、真っ向勝負で倒したのですから、ミシュリフのポテンシャルは本物中の本物と言わざるを得ません。第4回の昨年はドバイターフを同着で勝ち、天皇賞(秋)でイクイノックスに食い下がってみせたパンサラッサが鮮やかに逃げ切っています。ダート経験は一走のみの〝芝馬〟でした。しかも3着カフェファラオ、4着ジオグリフ、5着クラウンプライドと日本調教馬が掲示板をほぼ独占する勢い、というよりキングアブドゥルアジーズ適性に目を見張る思いでした。

ダートコースと一口に括りますが、その形状や状態は、国により競馬場により大きな差異があるようです。本場アメリカの水分を含んだ土(泥)をベースとしたスピード競馬向きの〝ダート〟を基準に考えると、日本の場合はその対極にも思えるパサパサの砂状〝サンド〟コースで統一されている現状です。アメリカンスタンダードを人工的に改良したAW(オールウェザー)はスピード要素を強化しつつ、馬場の保全性にも気を配り注目されましたが、芝馬優位の烙印が押され、近年はビッグレースの舞台から遠ざけられています。毎年のようにサウジやドバイ取材に出かける取材記者の方々によれば、サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場は、アメリカンスタンダードを手本に造成されているが、当初はダートにチップ素材を混入させるなど、少なからずAW寄りの仕上がりになっていたようです。ミシュリフやパンサラッサなどの〝芝馬〟が〝大金星〟を高々と掲げる背景になっていました。しかし年々改良が重ねられています。現在は、同じアメリカンスタンダードをお手本に造成され、改良を繰り返してきたドバイのメイダン競馬場のダートコースに近づきつつあるのでは?という見解も見かけます。こうなるとサウジからドバイへ転戦し、秋のアメリカ本国のブリーダーズカップへ至るというチャンピオンロードは一本筋が通っているような気もします。
日本の〝サンド競馬〟は、世界の〝ダート競馬〟とは一線を画す存在あるのは確かで、今後は日本のサンド最強馬が海外に遠征するというより、ワールドスタンダード適正馬がダートの舞台を求めて世界を転戦する構造になっていくんでしょうか?調教師さんや馬主さんなど馬に寄り添う方々が、考える事・やる事がどんどん膨らんでいくようです。

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