海外だより

競春は〝中東回廊〟から

昨日2月1日は、〝球春の訪れ〟など国民的常套句で親しまれるプロ野球のスプリングキャンプがスタートしました。今年は大谷翔平・山本由伸のメジャーリーグを代表するスーパースターコンビのドジャーズ入団で、ファンの関心も少し分散したような気もしますが、〝球春〟とともに訪れる胸の内の〝ワクワクドキドキ〟が止まりません。競馬ファンにとっては、新年最初の重賞レースである中山と京都それぞれの金杯の馬券勝利で目出度く「金杯で乾杯!」と美酒を飲み干すのが吉例となっているようですが、最近は中東各国で開催される高額賞金カーニバルへの遠征馬にエールを送るのが年の初めのルーティンとなりつつあります。2月中旬のカタールを皮切りに、下旬には総賞金2000万ドル≒29億円の世界一高額賞金レース・サウジカップをメインに据えたサウジアラビア、3月下旬には世界競馬界のトップブランドの一つとして定着しているドバイワールドカップデーが開幕を待ちかねています。いわば〝中東回廊(コリドール)〟を通って〝競馬の春(競春)〟を迎えに行くという粋な趣向です。この恒例開催が終わると北半球各国ではクラシックシーズンが一斉に開幕し、南半球ではシーズン最後のチャンピオン決定戦が火蓋を切ります。

カタールはパート2国とやや格下でレース自体も国際的には通用しないローカルグレードですが、賞金的魅力もあって英愛仏などヨーロッパ各国から一流メンバーが積極的に参戦し、近年のレベルアップぶりは目覚ましいものがあるようです。昨年は香港G1馬のロシアンエンペラーが優勝し、参加地域の拡大とともに国際性がますます高まっています。メインのローカルG1アミールトロフィーには、今年は日本から20頭近くがエントリーしています。ここを叩いてサウジやドバイに向かう馬、日本に帰国して春の大レースに備える陣営と思惑は様々ですが、〝競春〟らしい今年のプラン、さらに先々へのヴィジョンがぎっしり詰め込まれた玉手箱のきらめきです。

その先のサウジアラビアも楽しみ一杯ですが、ドバイでは夢のようなレースが待っています。サウジカップ創設以前は〝不可侵の世界一〟を誇ったドバイワールドカップなどで日本からの遠征馬が「強いのはイクイノックスだけじゃない」ことを実証してくれるかもしれません。ダート競馬では〝三流国〟と格下視されていた日本調教馬が、イメージとしては一朝にして〝一流国〟に肩を並べ、勢いだけなら世界有数のエネルギーを蓄積して来たように見えるからです。芝のドバイシーマクラシックは昨年の帝王イクイノックスに」続いて女王リバティアイランドが、ディープインパクトの英ダービー馬オーギュストロダンを迎えて、〝イクイノックス後継決定戦〟第1ラウンドを戦います。イクイノックスにダービーで先着したドウデュースが野望の前に立ちはだかる日本の十八番(おはこ)ドバイターフには、パンサラッサとの同着も含めて3連覇中のイギリスのロードノースが4連覇に挑みます。どのレースも目が離せそうにありません。今年の春はことのほか、熱くなりそうです。

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