皆さん、こんにちわ。元JRAジョッキーの佐藤哲三です。日刊スポーツのマイク記者からバトンを受け取りました。今までメディアを通して競馬についてはたくさん話させていただきましたが、今回のテーマである「競馬との出会い」についてはあまり話したことがないですね…。このような機会をいただきましたので、少しお話しさせてください。

 あれは中1の頃でした。父親に連れられて、今のボートレース住之江にボートレーサーを見に行く機会がありました。そこで父に言われたのが「レーサーになったらかっこいいぞ」。元々、小学生の頃からリトルリーグで野球をし、毎日5㌔㍍のランニングやトレーニングをしていたくらい、体を動かすのが好きでしたから。最初はボートレーサーを目指していたのですが、84年ジャパンCなど制した名馬カツラギエースのオーナーが当時近くに住んでいたという縁もあり、競馬に触れる機会があったので騎手課程を受けることにしたんです。

 そのときは馬に乗ったこともなかったですし、とにかく狭き門でしたからね。まさか受かるとは思っていませんでした。当時の教官は見る目がありますよね(笑い)。そうやって本格的に競馬とふれあうわけですが、当時は競馬の魅力に取りつかれたと言うよりは、とにかく同期に負けるのが嫌で。騎乗技術を磨いたのは良く覚えています。本当の〝競馬との出会い〟は、騎手としてデビューしてからのことです。

 多くのジョッキーは勝った時に喜びや、やりがいを感じると思うんですが、僕は違いました。負けた時の悔しさ、有力馬をどう負かしてやろうか、豊さんなどトップジョッキーに勝つにはどう乗ったらいいか。勝つためのプロセスを考えている時が一番ワクワクしていたというか、そこにやりがいを感じました。そういうのは負けて気付くもの。そんな若手騎手時代に馬っていいな、競馬って面白いなと思ったんです。

 そこから14年9月の引退まで26年間、騎手生活を歩んできました。タップダンスシチーやエスポワールシチー、アーネストリーなどで大きなレースを勝たせていただきましたが、それもこれも中山競馬場での経験が大きかったです。以前、メディアに話したことがありますが、僕が勝ちたかったレースはジャパンCと有馬記念。ジャパンCは03年にタップ(ダンスシチー)で勝ちましたが、有馬記念は2着が2回あるんですが未勝利で…。どうやったら勝てるのか。最後まで騎乗技術を磨くモチベーションになりました。さらに、00年皐月賞ラガーレグルスでの一件(ゲートで座り込み競走中止)でついた負のイメージを払拭(ふっしょく)するために、ゲートをうまくなろうと努力しました。GⅠ初勝利となった96年中山の朝日杯3歳Sでは、他馬に迷惑をかけてしまい、〝完璧〟にGⅠを勝ちたいと思いましたね。僕の騎手人生にとって中山競馬場はいろんな意味で思い出の地と言えます。

 引退した今も競馬に関わる仕事をさせていただいています。競馬って面白いですよね。それは今も昔も変わりません。そんな競馬に対する考え方、魅力について後輩ジョッキーを含め、ひとりでも多くの方々へ発信していけたらと思っています。

第14回 佐藤 哲三 さん(元JRAジョッキー)

元JRAジョッキー

『BREAK TIME』は、今回をもって終了となります。ありがとうございました。

※この記事は 2023年3月24日 に公開されました。


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