海外だより

サムライ・ジョッキー対決

世界中のサラブレッドに圧倒的な影響力を及ぼしているノーザンダンサーの生まれ故郷であるカナダを拠点に、世界の頂上を競う一流騎手への道を歩んでいる〝サムライ・ジョッキー〟木村和士さんが、その最高の栄誉である「ソヴリン賞」の最優秀騎手賞に輝きました。3年連続の快挙です。カナダで騎手免許を取得し、デビューするや北米全体を対象とする「エクリプス賞・最終週見習騎手賞」を受賞するなど、傑出した才能の煌(きら)めきを見せていましたが、見習い卒業と同時にリーディングジョッキーに君臨したのには驚かされました。それも昨年で3年連続です。ちょっと考えられない快挙です。日本人には、言葉のハンデが重くのしかかると指摘されていますが、昨今の若者たちは軽々とハンデを乗り越えて現地に溶け込む才覚を備えているようです。もちろん中南米はじめ世界中から才能にあふれ野心を燃やす若者たちが集まり競い合う自由な文化風土があってのことでしょうが、たった一人でオーストラリア遠征して目覚ましい成長を遂げた坂井瑠星騎手のように、淡々と逞しさを宿らせているのには尊敬の想いしかありません。

ご承知のように北極から吹き込む極寒にさらさられる冬場は、競馬もお休みなる土地柄ですが、木村さんは暖かいアメリカ本土の西海岸地区に遠征し、サンタアニタ競馬場を中心に休まず騎乗しています。全米のトップジョッキーたちが一堂に会するのはもちろん、〝生ける伝説〟ランフランコ・デットーリ騎手などもヨーロッパから主戦場を移しています。ジョッキーのレバルの高さを競うという面では、おそらく世界一の激戦区かもしれません。そういう甘くはない環境で、まず騎乗馬に巡り合うのが一大事です。まして勝ち負けになりそうな馬となると、闇夜に星を探すようなものでしょうか?重賞級となると、気が遠くなりそうな探しものになりそうです。

月が替わると、第1土曜にはアメリカ競馬最大のカーニバル(祭典)ケンタッキーダービーが幕を開けます。今年は5戦5勝と負け知らずのフォーエバーヤングが日本ファンの期待を一身に集めます。前売り人気では3番人気に支持されているようですから、坂井瑠星騎手の手綱さばきにも力がこもります。木村さんは「ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー(ダービーへの道)ジャパンラウンド」を勝ち抜いたテーオーパスワードへの騎乗が決まっています。坂井瑠星騎手と木村和士騎手、〝サムライ・ジョッキー〟同士の直接対決が見られることになります。日本競馬の誇りと言ったら、大げさすぎるでしょうか?主戦場は洋の東西に離れていても、世界を舞台に戦い続ける若者の真摯な騎乗に心躍る思いです。

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