努力と反省と反骨心でステップアップし続ける

初めてのダービーはすごく緊張して、今年はすごく集中していました
藤原デビューをされてからの初勝利のうれしいお話も聞かせていただきましたけど、1年目から2年目でグッと勝ち星が増えて(JRAで9勝から68勝)、さらに活躍されるきっかけになった印象がありますが、1年目と2年目で何か変化はあったのですか?
佐々木いや、特にそんな変わったことはしていないですかね。ずっと同じことを続けていただけかなと思います。
藤原変わらずにやっていたら、2年目、3年目に気付いたら勝ち星が増えていたという感じだったのでしょうか。
佐々木一番は2年目から(春先の)小倉に行って、福島、新潟、北海道という感じでローカルに行き始めたというのが一番大きいかなと思います。
藤原ローカルで経験したことが、自分の力にもなっていたということでしょうか。
佐々木そうですね。ローカルでちょっとずつ結果を出していって、減量特典もありましたし、そのへんがうまくかみ合ってきたというのはありました。
藤原なるほど。ローカルでの経験を糧にして今も活躍されていますが、今年はライヒスアドラーとのコンビにも注目が集まったと思います。今年の日本ダービーで2度目の騎乗をされましたが、初めてダービーに騎乗した時と今年とは心境の変化などはありましたか?
佐々木やっぱり初めてのダービーはすごく緊張しました。そして今年は緊張というよりは集中していた感じでした。すごく集中していました。
藤原すごい!GⅠのなかでもちょっと別格なGⅠというイメージがファンから見てもダービーにはあると思いますけど、集中して臨まれた日本ダービー。振り返ってどうでしたか?
佐々木1枠1番という一番いい枠を引かせてもらって、ちゃんとポジションを取りに行こうと決めていました。少し距離に対して不安のある馬だったので、やっぱり案の定、最後にそれが響いたかなという感じでした。
藤原佐々木騎手にとってライヒスアドラーはどんな存在ですか?
佐々木新馬戦からコンビを組んで、皐月賞、ダービーに乗れるというのは、なかなか本当に経験できないことだと思いますし、まだデビュー5年目の全然若手の僕にずっとコンビを組ませていただいた上原佑紀先生とオーナーには非常に感謝しています。
本当に自分の未熟が全部出てしまったレースだったと思います
藤原ライヒスアドラーの背中を知っているのは佐々木騎手だけだと思いますが、特に悔しいなと思ったレースなどはありましたか?
佐々木東スポ杯(東京スポーツ杯2歳S)ですね。馬の状態もすごく良かったのですが、まだ新馬戦を勝っただけで、すごく追い切りが目立っていいタイプでもないので、ちょっと半信半疑の気持ちで乗ってしまったんですよね。変にせこく乗ってやろうとか、そういうことを考えてしまって3コーナーでノーザンファームさんの馬に迷惑をかけてしまったり、それは本当に自分の未熟さですね。それが競馬で全部出てしまったレースだったと思います。本当に被害馬に対しては、今でも本当に申し訳ないと思っています。
藤原その東スポ杯でのいろいろな悔しさを経て、クラシックに歩みを進めて、クラシックをにぎわせた馬になりましたが、ご自身としてはこの東スポ杯での悔しさというものは“燃料”になった部分もあったのでしょうか?
佐々木そうですね。まずは一番に自分の馬もそうですけど、周りに迷惑を絶対にかけないように騎乗すること。あとはやっぱりこの馬の能力を絶対に信じてもいいんだということを確認できたので、あとの3戦は自信を持って乗りました。
もう悔しくてシャワーを浴びながら、ちょっとポロッと
藤原そのような思いを背負って挑んだクラシックだったという話を聞かせていただき、ありがとうございました。少し話は変わりますが、周りから佐々木騎手はどんな人だと言われることが多いですか?
佐々木どうなんですかね。やっぱり、おとなしい方じゃないですかね。そんなに目立つ感じではないと思います。
藤原いやいや、内に秘めるものが多いのかなと感じます。
佐々木どうなんですかね。やっぱり“同期の女の子”が、ちょっと華がありすぎて、僕は影に潜む感じだと思います(笑)。
藤原ファンから見たら全然そんなことないですよ。そもそもすごく落ち着いていらっしゃるなという印象が勝手ながらあります。プライベートも含めて、感情を爆発させて喜ぶこととか、涙を流して悲しがることなどはあるのでしょうか?
佐々木あー、まぁ、僕はすぐに泣くっすね(笑)。
藤原えっ?それは知られざる個人的な一面ですね!それはどんなところで…。
佐々木それこそライヒスアドラーの東スポ杯も、「うわ、なんでこんな乗り方しちゃったのかな」って。もう悔しくてシャワーを浴びながら、ちょっとポロッとありましたね。
藤原悔し泣きをすることがあっても、それは人前ではなく、割と一人の時になのでしょうか。
佐々木はい。どちらかと言えばそうです。
藤原その逆で、すごく喜ぶみたいな瞬間もありますか?
佐々木やっぱり勝った時ですかね。一番喜ぶのは。
同期には負けたくないという気持ちが一番だと思います
藤原そうですよね。結構、感情は表に出されるのですね。今年の上半期では、ジュウリョクピエロで今村聖奈騎手がオークスを制した時に検量室に帰ってくる今村騎手に駆け寄る佐々木騎手の動画は、かなりネットも含めて話題になったとお聞きしています。あの時はどんな言葉を今村騎手にかけられたのですか?
佐々木「おめでとう」というのと「悔しいなあ」みたいな感じでした。
藤原勝負においては同期の活躍というのは、うれしさと悔しさで言ったら、個人的には悔しさの方が大きいじゃないかなと想像するのですが…。
佐々木もちろん、そうですね。悔しさが「99」くらいじゃないですか。そんなもんだと思います。もはや悔しさが「100」くらいかもしれないです。
藤原そんな悔しさがあるなかでも、ちゃんと同期の今村騎手に駆け寄って言葉をかけていらっしゃるというのは、すごく素敵な場面だと思いました。
佐々木さすがにGⅠなので(笑)。
藤原そうですよね。その悔しさは佐々木騎手にとって、また一つ糧になる出来事でしたか?
佐々木そうですね。だからこそ、やっぱりGⅠを勝ちたいと思います。
藤原そうなのですね。改めて同期というのは、どういう存在ですか?
佐々木負けたくないという気持ちが一番だと思います。
藤原佐々木騎手は、本当に心の中に負けず嫌いな気持ちを強く持っていらっしゃるのですね。
佐々木1年目の頃は結構妥協するような感じもあったのですけど、今は「もう一回頑張ろう」みたいな感じで考えています。
藤原同期という存在は大きいのですね。“逆襲”というか、佐々木騎手の今後を勝手ながら応援させていただきたいなと思いました!
佐々木ありがとうございます。頑張ります!
メンタルを立ち直らせるには勝つことが一番
藤原いろんな悔しさがあったなかで、メンタルを保つというか、その「悔しいな」と思ったことからの立ち直り方ってあったりするのでしょうか?
佐々木はい。一番はやっぱり勝つことだと思いますね。それだけです。
藤原次の勝利を挙げることで悔しさを晴らしていくのですね。
佐々木やっぱりどれだけ失敗しても、次で勝てたら、やっぱり気分は良くなりますので。
藤原次の勝ちに行くためには切り替えないといけないと思うのですが、悔しいことや悲しいことがあった時の切り替えはどうやっていますか?
佐々木僕はあんまり気持ちを切り替えることが上手ではないので、引きずったままですね。切り替えるのは上手じゃないと思います。
藤原そんななかで本当に騎手の方がすごいなと思うのは、レースごとのインターバルが30分くらいしかなくて、次のレースに向けて準備ができるのは実質30分もないじゃないですか。仮に1つ前のレースで、ちょっと悔しいなってことがあった時に、次のレースに向けても特段切り替えないで臨んでいらっしゃるということでしょうか…?
佐々木そうですね。う~ん、やっぱりそんなに人間はすぐにパッとは嫌な思いとかチェンジできないと思いますね。僕は「あー、やらかしたー」みたいな感じになっています。でも、やっぱり馬に乗ったら、いざレースとなったら忘れざるをえないので。そんなことを考えている暇もないですからね。
藤原そうなんですね。皆さん、切り替え上手なのかなって勝手に思っていたので、すごく自然体な佐々木騎手の今の言葉に何だか救われた気がしました。無理に切り替えられなくてもいいんだ、って何だか力をいただきました。
佐々木ゲートを切ったら、もうそんなことを考える余裕が本当にないので。
藤原馬に乗っているからこそ、そこで1回リセットされる。でも心には残っているから、一日が終わった時にドッと押し寄せる感じなのですね。その反省はどのようにご自身でされているのですか?
佐々木やっぱり全レースが終わってからですね。パトロールビデオを見返して、「こうしておけばよかった」とかの繰り返しですね。
藤原そういうことはノートに書き留めたりされるのですか?
佐々木僕はノートには書き留めてはいないですけど、う~ん、やっぱり書き留めた方がいいんですかね?僕も一時は書いていたのですけど、書いてもぐちゃぐちゃになってしまうので…。反省はしますけど、そのうえで次の週に乗る馬のことを考えたりします。
藤原反省も大切にしつつ、次の馬のことを考える時間を大事にしていらっしゃるのですね。どうやって反省から次につなげていらっしゃるのか、きっと参考になると思います。このインタビューは競馬界を目指す若者をもっと増やしたいという中山馬主協会さんの思いもあって始まったコーナーなので、きっと乗馬を頑張っている子供たちに響くのではないかなと思います。
佐々木ぜひ響いてほしいです!
夏の北海道開催では25勝くらい勝ちたいです
藤原騎手として大切にされていることはありますか?先ほど騎乗スタイルでは、馬から落ちない、絶対に馬の上にいる、ということをお話しいただきました。例えばメンタル面とか、謙虚でいることなども大切にされている一つだと思いますが、何かありましたら教えていただきたいです。
佐々木やっぱり、いかに馬に乗って何事もなくゲートを切って、無事に帰ってくることかなと思います。やっぱりゲートを切らないとお金も入ってこないですから。厩務員さんもお金がもらえないですし、みんながお金をもらえませんので。「ゲートさえ切れば」という言い方もないですけど、「とにかくゲートは切って帰ってこないと」と思っています。
藤原佐々木騎手にとって、めちゃくちゃ大事にされているところなのですね。今は夏競馬のシーズンで札幌でたくさん乗っていらっしゃって、時には新潟に行く週もあるでしょうけど、夏競馬の目標などはいかがでしょうか?
佐々木北海道で25個くらい勝ちたいです。ザックリしていますけど(笑)。頑張ります!
藤原北海道は涼しそうですね。
佐々木そうですね。めちゃくちゃ涼しいですね。
藤原個人的な話で申し訳ないですが、私は先日、中京競馬場に行きまして、最高気温が39.5度とかだったので、「札幌はいいなあ」と思いながら見ていました(苦笑)。
佐々木間違いないですね(笑)。
藤原炎天下のなかでもレースをされている騎手の方はすごすぎるなと思っています。雨の日も風の日も雪が降っても乗り続けなくてはいけませんが、どんな天候でも乗るコツってあるのでしょうか?
佐々木どんな天候でも乗るコツって言ったら、やっぱり「我慢」じゃないですか。
藤原佐々木騎手にとって、一番嫌な天候は何ですか?暑さ、雨、雨風、雪などいろいろあるなかで。
佐々木雨と雪ですね。暑い分には我慢できます。寒くて雨とか雪が降っているのは、もうやめてほしいですね(苦笑)。
藤原そうなのですね。暑いのは我慢ができるというのは、普段から何かトレーニングなどをしていらっしゃるのですか?
佐々木やっぱり減量で、みんなサウナをしてるので。やっぱり暑いじゃないですか(笑)。
藤原あー!そういうことですか。サウナくらいの気温になったら大変なことですけど、暑さに耐えられるというのはすごいです。それなら寒い方が嫌ということですね。
佐々木つらいですね…。
あの先輩やこの後輩の存在も大きな刺激や励みに
藤原ありがとうございます。プライベートなお話もうかがえたらと思いますが、お休みの日は何をされているのですか?
佐々木休みは特に何もしていないですね。
藤原何もしてないというのは、お家の中で体を休めている感じですか?
佐々木そうですね。ちょっとご飯をどこかへ食べに行って終わりです。
藤原好きなご飯は何でしょうか?
佐々木焼肉ですかね。やっぱり一番は。
藤原焼肉なのですね。テレビ東京さんのインタビュー動画を拝見させていただいて、舟山瑠泉騎手と焼肉に行かれたのを拝見しました。舟山騎手とは仲良しでいらっしゃるのですか?
佐々木そうですね。仲がいいですね。
藤原後輩の存在というのも、すごく大きいかなと思うのですけど、そのあたりはどうですか?
佐々木やっぱり瑠泉もすごく上手なので。今年はいっぱい勝っていますし、僕も負けずに、という気持ちでやっています。
藤原他に仲の良い騎手、よく話す騎手の方はいらっしゃいますか?
佐々木先輩だと荻野極さん。あと西村淳也さんも競馬場でよくお話させていただきます。
藤原話せる範囲で、どんなことをお話されているのですか?
佐々木やっぱり競馬の話ですね。「どうしたら、もっとよかったですかね」とか。
藤原へー、フィードバック的なものをいただいたり。
佐々木そうですね。「極さんだったら、どうしていましたか?」とか。
藤原結構、先輩から学ぶことも多いのですね。
佐々木そうですね、多いですね。
藤原何か趣味ってありますか?
佐々木趣味っていう趣味があんまりないので、やっぱりご飯を食べることですかね。
藤原よく聴く音楽などはありますか?
佐々木1個上の先輩の横山琉人さんが、ずっとミセス(Mrs.GREEN APPLE)を聴いているので、うつっていますね(笑)。
藤原じゃあ結構、ミセスを聴かれているんですね。「うつっている」という表現が面白いですね(笑)。
佐々木音楽って言われたら、そうなるかと思います。
藤原横山琉人騎手もこのインタビューを受けてくださったことがあって、その時もやっぱりミセスが大好きで、兄弟弟子の石川裕起人騎手と一緒にライブへ行くといった話もされていましたけど、ライブなどにも行かれたりはしますか?
佐々木いや、1回もないですね。
少しでも僕は皆さんの馬券に貢献できるように3着以内に馬を持ってきたい
藤原そうでしたか。いろいろプライベートなお話もうかがわせていただきまして、ありがとうございました。このコーナーでは皆さんに「座右の銘」をお聞きしているのですが、佐々木騎手はございますか?好きな言葉などでもいいのですが。
佐々木やっぱり健康第一でしょうか。
藤原どうもありがとうございます。健康を維持していくために意識されていることなどは何かありますか?
佐々木やっぱり、お酒とタバコはしないとかでしょうか。あんまり僕はお酒を飲まないですね。
藤原へー。そうなのですね。食生活とか健康面で何か気遣っていたりしますか?
佐々木う~ん、そんなに気を遣ってもいないですけど、ジュースやお酒はあんまり飲まないですね。お菓子もそんなに食べないです。やっぱりお酒とかは、体重が落ちにくくなるので。
藤原ありがとうございます。健康の秘訣もうかがったところで、最後にこのコーナーは未来のホースマンに向けて届けたいインタビューでもありますので、これから騎手になりたい子たち、競馬界に入りたい子たちにメッセージをお願いしてもいいですか。
佐々木競馬学校は黙って教官の言うことを聞くというのが一番大事だと思います。無事に何事もなく卒業した方がいいよ、という先輩からのアドバイスですね。
藤原「経験者は語る」というわけではないですが、ありがとうございます(笑)。あと、読者の方々、競馬ファンの方々に向けてのメッセージもお願いいたします。
佐々木毎週、土日に競馬ができているのもファンの方が馬券を買ってくださるおかげなので、少しでも僕は皆さんの馬券に貢献できるように3着以内に馬を持ってきたいと思っています。
藤原ありがとうございます。そう言えば、ご自身の厩舎のロッカーにファンからいただいたお手紙を置いていらっしゃるのですよね?
佐々木そうです。厩舎宛てに送られてくる手紙などは置いてあります。
藤原ファンレターには全部、目を通していらっしゃいますよね。
佐々木もちろん全部目を通します。
藤原それはファンの方が聞いたら超うれしいことですね。「ちゃんと届いているんだ」って。ちなみにファンの掛け声などは馬の上から聞こえるものですか?
佐々木いや、僕はそんなに聞こえていないですね。馬の息とかを聞いたりしていますので。
藤原それも興味深いお話です。お忙しいなか、いろいろなお話を聞かせくださってありがとうございました。競馬の世界を志す方々にとっても、非常に参考になると思います。
佐々木ありがとうございました!今後とも応援よろしくお願いいたします!
構成:スポーツ報知 坂本達洋

藤原 菜々花ラジオNIKKEIのアナウンサー。担当番組:「中央競馬実況中継」「ななかもしか発見伝!」「こだわり羽生結弦セットリスト」等