草野太郎騎手

気持ちが切れてもスタミナが切れたことがないことが、エコロデュエルの強さだと思っています。

ゲストをお迎えしてお届けする「藤原菜々花のWe♡horses」。今回のゲストは草野太郎騎手です。2025年エコロデュエル号で中山グランドジャンプ、中山大障害を制覇。連覇がかかる中山グランドジャンプを前に、草野騎手へエコロデュエル号の強さとこれまでの過程をお聞きしました。

エコロデュエルで中山グランドジャンプ、中山大障害制覇

藤原草野さんはデビュー19年目にして、昨年の中山グランドジャンプ、中山大障害と2つのジャンプG1をエコロデュエルで制覇なさいました。

草野目標としていたジャンプG1を勝てましたし、昨年は僕にとって特別な1年になりました。ただ、調教中に鎖骨を骨折して1か月ほど休んだことが残念でしたね。怪我をしないというのも、目標のひとつなんです。

藤原怪我から復帰するまでは、どのように過ごされたんでしょう?

草野鎖骨だったので、手術後に制限されることは、ほぼないんです。だから、競馬を見ていました。乗ることから、見ることに集中できたのは、いい時間になったと思います。ただ、見ていると「みんな落ちないでね」って心配になりますね。自分が乗っている時は全然怖くないんですけど、「うわっ、危ない!」とか、声を出して見ていました(笑)。

藤原障害競走で乗るジョッキーのみなさんは、危険と隣り合わせですもんね。

草野でも、以前よりも落馬の数は減った印象があります。

藤原何か対策をなさっているんですか?

草野スクーリングをするようになったのは大きいでしょうね。レースの前日、参戦する人馬で実際のコースを確認して回ります。石神深一騎手などが、声を上げてくれたんです。

藤原コースの、どんなところを中心に確認するんですか?

草野例えば京都競馬場では、名物の三段跳びですね。京都にしかない特殊な障害なので、出場する人馬は、まず確認します。※向正面の9号障害(飛び上がり飛び降り台)のこと。高低差80cm、長さ15.9mの台上の障害を指す。台に上がってから、約3完歩で降りることから、こう呼ばれる。

障害を飛べるようになるまで

藤原騎手はもちろんですが、その障害を飛ぶ馬にも、どんな障害かを見せておくんですね。

草野はい。僕らジョッキーの危険防止への思いを、JRAの方々も理解してくれたことで、できるようになりました。スクーリングのために1日早く馬が行けば、その担当の厩務員さんも一緒に行ってしまいます。厩舎での仕事の手が少なくなりますが、そこはスタッフのみなさんが理解して送り出してくれているんです。まだ、できない競馬場もありますが、みんなの安全に対する意識が高くなっていると感じます。

藤原スクーリングには、どのぐらいの時間をかけるんですか?

草野その馬によりますね。ぐるっとコースを回って、少しだけ走らせてみて、気をつけたい障害をいくつか飛ばすと30分ぐらいでしょうか。本番直前なので、障害を飛ばすと馬の気合が入り過ぎるということで、見せるだけの騎手もいます。それぞれ、違いますね。

藤原草野さんは?

草野僕は、あまり飛ばさないです。馬に飛んだ疲れを残したくないなと思っているので。でも、経験の少ない馬なら、多めに飛ばすこともありますよ。エコロデュエルは、しつこく飛ばしませんね。コース内を全部見せた後に、最終障害をポンッと飛ばすぐらいです。そこは、各ジョッキーの判断になります。

藤原障害はレース前日から、戦いが始まっているんですね。調教に関しても、障害はコンビを組む人馬の絆が深いですよね。練習の段階から一緒です。

草野最近は近隣の牧場で、小さな障害までは飛べるように調整してくることも増えています。そうでない場合は、障害角馬場にある横木をまたぐことから始めて、段々と高さを出して飛べるように練習していきます。

23年の中山大障害で大成を確信

藤原一から訓練を始めて、どのぐらいで障害を飛べるようになるんですか?

草野センスのいい子なら、1週間もあれば低い障害を越えられるようになりますよ。

藤原そんなに早くですか!エコロデュエルも、そうでしたか?

草野いやいや。エコロデュエルも牧場で初期の段階まで進めてくれていたんです。だから、トレセンにきて最初は上手に飛んでいました。でも、大きな障害に向かうと怖がってしまって。障害試験に向けて飛べるようになるまで、練習で3回は落馬しましたよ(笑)。

藤原では、かなり時間がかかった?

草野そうですね。障害は怖くないよ、大丈夫だよと、馬が納得すれば飛んでくれるようになるんですが、そこまで行くのに普通の馬の倍はかかりましたね。

藤原優等生でどんどん訓練が進んだのだと思っていました。

草野いえいえ。でも、障害馬にとって怖がりなのは、マイナスではないんです。飛ぶことに恐怖のない馬は、障害を甘くみてしまうことがあります。そうなると、いつか失敗してひっくり返る。障害を舐めず、慎重になるのはいいことなんですよ。

藤原そうなんですね。でも、大きな障害に躊躇するエコロデュエルを見て、2つのジャンプG1を制す馬になると想像できましたか?

草野う~ん、まずは障害馬になれるのかって心配しましたよね。障害レースのデビュー戦も、比較的難易度の低い新潟でした。それでも、8頭立ての7着。でも、飛ぶときのバネがスゴイんです。だから、慣れてくれば大丈夫だとは思っていました。

藤原「これは大成する」と確信したのは、いつ頃ですか?

草野23年の中山大障害の時ですね。でも、その前走の京都ジャンプが、勝ったとはいえハチャメチャなレースだったんです。三段跳びも、つまずきましたしね。だから、大障害の前は不安でした。距離も4100mになりますし、走り切れるかという心配もありました。

藤原不安の多いなかでの参戦だったんですね。

草野はい。でも、結果は初参戦で3着でした。まだ、4歳の暮れで馬体も精神面も幼さがある中でですからね。このまま順調にいけば、勝つ力はあると感じました。そこからは、ゆとりのあるローテーションを組んでもらいました。それが、馬にとっては大きかったと思います。

エコロデュエルの強さはどこにある?

藤原エコロデュエルに関わるみんなが一丸となって、育て上げていったんですね。その中で、初のジャンプG1制覇となった中山グランドジャンプに挑みました。振り返って、いかがですか?

草野勝つつもりで挑んだんですけど、すぐには信じられませんでした。

藤原ユーチューブでのジョッキーカメラも話題になっていました。道中は「ホホゥ~!」という楽しそうな草野さんの歓声から、最後は「頑張れ!」「頼む!」と馬を鼓舞し続けていました。

草野大胆なレースになりましたよね。その判断をしたのは自分ですが、「この作戦で合っているか?」という怖さがレース中はずっとありました。あんな位置から仕掛けていくなんて、普通はしませんから。

藤原前を行くジューンベロシティに終始競りかける形で、後方を引き離して行きました。しかも、先頭に立っての最終障害で崩したバランスを立て直しての8馬身差の勝利。

草野どうしたら、力を出し切ってくれるかを考えての作戦でした。最後の障害は脚が上がらなかったのではなくて、スタンドの歓声に驚いて、馬が物見をしてしまったんです。あれは、さすがに「危ない!」と思いましたね。それでも、立て直して勝ち切ってくれました。

藤原しかも、レコードタイムを叩き出しました。さらに、年末の中山大障害を制し、名実ともに国内ナンバーワン・障害馬となりましたが、その強さはどこにあるんでしょう?

草野一番はスタミナです。気持ちが切れても、スタミナが切れたことはありません。それが、あの馬の強さだと思っています。

構成:スポーツ報知 志賀浩子

藤原 菜々花ラジオNIKKEIのアナウンサー。担当番組:「中央競馬実況中継」「ななかもしか発見伝!」「こだわり羽生結弦セットリスト」等

※この記事は 2026年4月16日 に公開されました。

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