森泰斗元騎手

JRA馬とダートグレード戦で互角以上に戦える馬を育てていきたい。いずれは海外競馬にも挑戦したいですね。

毎回、ゲストにお迎えしてお届けする「藤原菜々花のWe♡horses」。地方競馬全国リーディングジョッキー6回、南関東リーディングジョッキー9回と地方競馬でトップジョッキーとして活躍された森泰斗元騎手。後編では、調教師としての今後の目標などを語っていただきました。

騎手を辞めたら腹いっぱい食うぞ!

藤原引退の記者会見で、「ハンバーガーを食べながら、ゲームをしてみたい」とおっしゃっていましたが?

あっ、ドラクエをクリアしました。あとは、スノボも行きましたね。騎手の間は怪我をするといけないので止めていたんです。

藤原騎手の方って体幹がいいのでお上手そうです。

けっこう、うまいですよ(笑)。でも、食べるのは…。「騎手を辞めたら腹いっぱい食うぞ!」と思っていたんですけど、ずっと食べない生活をしてきましたからね。いざとなると、食べられないんです。そんな自分がかわいそうに思うこともあります(笑)。

藤原体重は全然、変わらないですか?

1kg増えたぐらいですね。そうそう、夜更かしもできませんでした。いつも寝ていた時間には眠くなるし、調教に行く時間に目が覚めるし(笑)。習慣ってなかなか抜けないんですね。なんだか切ないです。

南関東の騎手の1日

藤原南関東の騎手の方たちの1日は、どんなスケジュールなんですか?

早い人なら朝の3時から8時頃まで調教に乗って、いったん仮眠。11時ぐらいに起きて、準備をして競馬場に向かいます。レースは15時ぐらいからのナイターです。最終レースが終わって帰ると、22時を過ぎますね。そこから食事をとって就寝して…。

藤原で、また3時から調教ですか!?

そうですね。南関東競馬は基本、月~金曜日までの5日開催します。若手はビッシリ仕事がありますから大変ですよ。僕は引退の頃は追い切りに乗るぐらいでしたが、上を目指していた若手の頃は、こんな生活でしたね。

藤原かなりタフでないと勤まらないですね。

調教に乗ってレースに乗って、減量もしますよね。免疫力が落ちて、湿疹がでたり、手にブツブツができたことがあります。病院に行ったら「栄養失調だ」と言われたこともありますよ。「今の時代に?」って自分でもビックリしました。

藤原疲労が溜まっているという体からのサインだったんでしょうね。

でも、調教に乗らないと騎乗依頼もこないので当時は必死でした。こんな生活も、何年か続けると平気になりましたね。人間って、どんな過酷な状況にも適応する力があるんですよね。

藤原いや~、私なら病んで逃げ出しちゃうかも(笑)。

病んでいたかもしれないですよ。週末に大酒飲んだり、していましたから(笑)。

藤原ストレス発散はお酒だったんですね(笑)。

リーディングに上り詰めたモチベーション

藤原その過酷なスケジュールをこなして、リーディングに上り詰めたモチベーションは、どこからきていたんでしょう?

リーディングへのこだわりと、いい馬に乗せてもらうのだから期待に応えないと、という責任感ですね。そういえば、騎手としての人生は、さほど楽しくなかったかも。勝った時は、うれしくはありますが、ホッとした気持ちの方が強かったので、安心するということは、なかったですね。

藤原精神面がタフでないと、南関リーディングは張れないですね。調教師試験に合格なさって、今は研修中なんですか?

そうです。この間はオーストラリアに行ってきました。南関東競馬に似ている点があるからと、馬主さんが勧めてくださったんです。トップトレーナーの厩舎にお世話になったんですが、本当に勉強になりました。

藤原海外競馬を実際に見て、持ち帰るものは多かったんですね。

馬の個体差や文化の違いはありますが、坂路ではなく基本的にトラックワークで馬を仕上げるところは南関東と同じでした。追い切りのタイミングやレースのローテーションに関することなども参考になりましたし、いいところは取り入れていきたいですね。そうそう、僕はウインクスのファンなんです。G1を25勝したオーストラリアの馬なんですが、そんな馬がトラックワークだけで、あそこまで強くなったのには驚きました。あとは、馬の目に輝きがありましたね。

藤原それは、気力が充実しているということですか?

そうですね。土地は広大なので、厩舎に放牧地があるんです。馬が疲れたらすぐに休ませることができます。南関東では難しい面もありますが、砂浴びをさせるだけでも、馬はリラックスします。そういうメンタル面を大事にしていきたいと思いました。

藤原開業のスケジュールは決まっているんですか?

はっきり決まってはいませんが、今年の10、11月ぐらいになりそうです。

どんな調教師を目指されますか?

藤原どんな調教師を目指されますか?

まずは勝ちたいですね。勝率にはこだわっていきたいです。あとは、JRA馬とダートグレード戦で互角以上に戦える馬を育てていきたいです。今の段階では、地方馬はだいぶ分が悪いですから。そして、いずれは海外競馬にも挑戦したいですね。

藤原地方から海外に参戦するって夢がありますね。

船橋からはアジュディミツオーが2005年のドバイワールドC(6着)に参戦しました。最近では大井のマンダリンヒーローがサンタアニタダービーで2着しましたし、兵庫のイグナイターもドバイのゴールデンシャヒーン、リヤドダートスプリントに挑戦しています。海外遠征が簡単でないのは分かっていますけどね。

藤原勝ちたいレースはなんでしょう?

まずは、東京ダービーですね。騎手として勝てたので、調教師としても勝ちたいです。まあ、昨年から交流重賞になったので、なかなか厳しそうですけど。研修で行ったオーストラリアの競馬…たとえばメルボルンCとかは賞金総額600万豪ドル(約6億円)ですし、勝ちたいレース、いっぱいありますね。開業前なので、夢を言うだけなら、ただってことで(笑)。でも、理想は高く持たないといけませんしね。

藤原騎手の時も、これを勝ちたいと公言していたんですか?

していましたね。僕は自分にプレッシャーをかけていくタイプなので。まあ、人それぞれで、呑気にしていた方がいいというタイプの騎手もいますけど、僕は目標を高く掲げないと、それ以下しか得られないと思っているので。

藤原気持ちで負けちゃ、ダメってことですね。そんな森さんの座右の銘はなんでしょう?

「雨垂れ石を穿(うが)つ」です。雨が一滴ずつ、トントンと落ちる。それが長い年月がたつと、石が徐々に削れて、いずれは割れることもあるという。アリとキリギリスの物語なら、僕の騎手人生はアリでしたからね。

藤原ずっと、コツコツと積み重ねていらしたわけですもんね。最後にファンの方にメッセージをいただけますか?

ジョッキーとしての僕を、応援してくださって、ありがとうございました。これからは、調教師として新しい形で競馬界で頑張っていきますので、これまで同様に応援してください。

構成:スポーツ報知 志賀浩子
Photograher:橋本健
広報担当:IDEO

藤原 菜々花ラジオNIKKEIのアナウンサー。担当番組:「中央競馬実況中継」「ななかもしか発見伝!」「こだわり羽生結弦セットリスト」等

※この記事は 2025年7月15日 に公開されました。

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