ファンに「良いレースだったね!」と思ってもらえるよう僕たちジョッキーも頑張らないといけない。

父・典弘騎手との会話
藤原和生騎手と言えば、タイトルホルダーとのコンビがファンには印象的です。
横山そう言っていただけると、うれしいですね。最後の有馬記念(3着)は、なんとかしたかったという気持ちはあります。それでも、初のG1制覇は、この馬とでしたし、凱旋門賞へも参戦しました。常に新しい景色を見せてくた馬です。
藤原思い入れのある1頭なんですね。
横山そうですね。でも、これまで乗った、どの馬にも思い入れがあります。うまく乗れて勝てた馬、うまく乗れなかったけど勝てた馬…ほんと、どの馬にもみんな個性がありましたし、いい子もいれば気難しい馬たちもいましたけど(笑)乗りやすいばかりでなく、気難しいなどの個性のある馬がいることで、騎乗技術も上がっていったと思うんです。それが自信にもなっていますし、その1頭1頭が横山和生という騎手を作り上げてくれたんだと思っています。
藤原そういう、競馬の話って、お父様の典弘騎手としますか?
横山会話の95%は競馬のことですよ(笑)。日曜にレースが終わってから月、火曜日は「あのレースでは、和生はいい位置にいたな」とか。でも、同じGIに乗るとなると、お互いライバルなので、一言も話さないですよ(笑)。
藤原大阪杯の時もですか?
横山そうですね。お互いに、どうやって相手を負かすかの勝負になりますから。あのレースでは、ベラジオオペラが3、4番で、シックスペンスに乗った武史も3番手。1コーナーでは父のアルナシームが4番手のあたりにいるのが見えて、みんな同じようなことを考えてるんだなと(笑)。
藤原昨年の有馬記念では和生騎手はベラジオオペラ、 典弘騎手がダノンデサイルに騎乗していました。この時はいかがでしたか?
横山有馬記念枠順抽選会に行く時は、色々な話をしながら一緒に行きました。でも、枠が決まっての帰りの電車ではお互いにレースでの思惑が出るので無言です。ここからは、ライバルですから。どの騎手ともそうですが、相手がどう出るかを読んでの駆け引きですからね。これが、楽しいんですよ。

一番のライバルは?
藤原一番のライバルっていらっしゃいますか?
横山いやいや、全員です。全員に勝たないと、1着になれないですから。子供の頃は父のレースを見て、簡単に勝っているように見えていました。でも、大胆さの中に繊細さがあって、あの思い切りの良さは、父が馬から感じ取ったことを表現した結果なんですよね。レースは、追い出しのタイミングひとつ間違えば勝てないことはざらです。父は3度ダービーを勝っていますが、どのレースを見ても、勝つにはあの騎乗だなと納得できます。ああいう、人になってみたいなと思いますね。
藤原典弘騎手に褒められることってありますか?
横山だいたいのレースが「あの乗り方なら、俺でもできる」と言う人なんで(笑)。でも、ウシュバテソーロで勝った23年の川崎記念は、「自分が乗って、あのレースプランを選択できるかわからない。いいレースだった」と言っていました。それがとても嬉しかったですね。自分でも、思い描いたレースができたと思っています。
藤原やはり勝ったときは、騎手になって良かったと思う瞬間ですか?
横山もちろん、勝った時は嬉しいですよ。でも、それだけではないですね。調教師さんや厩舎スタッフと相談した馬作りのビジョンがうまくいって、その結果勝てた時の嬉しさは格別です。思い描いて努力した結果がいい方向で発揮できたわけですから。それは、未勝利でも大きなレースでも同じです。
藤原それが、モチベーションになっているんでしょうか?
横山そうですね。馬も含めて、みんなで同じ方向を向いて勝てた時は気持ちいいですよ。もちろん、負けることもあります。でも、みんなで考えながら、例えば砂をかぶっても平気になったり、ゲートが出られるようになったり、レースで勉強をさせながら、一歩ずつ勝利に近づいていくことに、やりがいを感じます。
藤原競馬って騎手の方が一人で戦っているように見えますが、そこに向けてチームで馬を作り上げているんですね!
横山レースは華やかですが、そこまでの過程があって、最後のバトンを渡されるのが騎手です。牧場スタッフそして、入厩して厩務員、調教助手、調教師と…皆さんの努力があればこそですし、その一頭の馬に対してのビジョンを共有してチーム一丸で勝てた時の感動は、より大きくなるんだと思います。

これから先も怠ることなく、努力して頑張っていきたい
藤原和生騎手は、競馬は楽しいですか?
横山ずっと楽しいです!毎週末に競馬があって、それに向けての調教をする。やっていることとしては、ずっと同じローテーションで動いているのですが、同じ馬に調教で乗っても、その日その時で色々な変化や反応がありますし、毎回レースでは相手が変わりますし、流れも変わります。馬場状態も刻一刻と変わる事もありますし、同じレースは2度とないので、飽きることがないですね!楽しくて仕方がないです。悩むことはたくさんありましたが、嫌だと思ったことはありません。楽しい仕事だと思います!
藤原騎手が天職なんですね!
横山どうなんでしょう?天職なのかな?(笑)。それなら、嬉しいですね!
藤原これからジョッキーを目指す若い人達に一言お願いします。
横山競馬には夢があります。やっていてやり尽くしたということがないですし、どこまでも深く潜れるような、こんな面白い仕事は他にないと思います。これから騎手だけでなく厩務員などで競馬の世界を目指す人達にも、みんなでこの面白さ、楽しさを味わってもらって、そこに僕も居られれば最高だと思います!
藤原とても素敵なメッセージありがとうございます。最後にファンの皆様にも一言お願い致します。
横山競馬場に通ってくれているファンの皆様、レースを愛してくれているファンの皆様に少しでも「良いレースだったね!」と思ってもらえるように僕たちジョッキーも頑張らないといけないと思ってます。僕自身、これから先も怠ることなく、努力して頑張っていきたいと思っておりますので、これからも応援の程、宜しくお願い致します!

構成:スポーツ報知 志賀浩子
Photograher:山口比佐夫
広報担当:IDEO

藤原 菜々花ラジオNIKKEIのアナウンサー。担当番組:「中央競馬実況中継」「ななかもしか発見伝!」「こだわり羽生結弦セットリスト」等
