戸崎圭太騎手

馬を気持ちよく走らせて、競走に気持ちを集中させたい

2024年有馬記念でレガレイラ号を見事勝利へ導き、64年ぶり2頭目の3歳牝馬有馬記念制覇の偉業を成し遂げた戸崎圭太騎手。騎手を目指したきっかけやJRA移籍のことなどお話を伺いました。

騎手を目指したきっかけ

藤原戸崎さんは、地方の大井競馬で騎手デビューをなさいました。騎手を目指したきかっけはありましたか?

戸崎本当は、普通に高校受験をしようと思っていたんですよ。ところが、中学校3年生の夏に、実家のご近所さんに「体が小さいし、騎手とかいいんじゃない?」と言われました。それで、騎手という職業を初めて知ったんです。

藤原その一言がきっかけだったんですね。

戸崎はい。でも、当時競馬のことは何も知らなかったんですよね。地方、中央の違いも分からない。
僕、出身が栃木県なんですよ。地方競馬の騎手になる学校、地方競馬教養センターが同じ県内の那須塩原市にあるので、そこを受験することにしました。

藤原じゃあ、地方競馬の騎手になる!と意識してではなく、ご実家に近いほうを選んだんですね。騎手課程の受験前に、何か準備はしましたか?

戸崎乗馬を始めました。そこで、初めて馬に乗りましたね。あとは、身体検査があるので運動をしたり、一般教養の試験に向けて勉強をしました。

藤原晴れて合格して、地方競馬教養センターでの生活はいかがでした?

戸崎とにかく厳しかったですね。今なら、プロの世界で大事なことを教えるためだと分かるんですけどね(笑)。

藤原そうなんですね!その厳しい環境の中で楽しかったことは何かありましたか?

戸崎当時は週に1回、600円分のお菓子が買えたんです。それが凄く楽しみでした(笑)。自分で量か質かを考えて買うんですよ。

藤原少ないチャンスですから、重要な決断なんですね!戸崎さんは、どちら派だったんですか?

戸崎僕は「質」派です。しかも、ロッカーにため込んで、セコく、ちょこっとずつ食べていました(笑)。でもね、そんな楽しいことも、苦しいことも同期がいましたから。常に仲間がいるのは、いいものだったなと思います。

JRAへの移籍

藤原そんな同期の方たちと切磋琢磨して地方競馬でデビューしますが、JRAへの移籍を考えたのはいつぐらいだったんですか?

戸崎やはり、2003年に当時は笠松所属だった安藤勝己さんが、JRAの騎手免許試験に合格したことですね。こんなチャンスがあるんだ!と知ったことは大きかったと思います。それに、2011年にリアルインパクトで安田記念を制覇したのも、後押しになりました。

藤原移籍に向けて、何かなさいましたか?

戸崎受験勉強はしましたね。

藤原えっ、勉強ですか?

戸崎僕の時は筆記試験があったんです。だから、競馬の法規や、馬具、馬の病気に関する勉強をしました。

藤原でも、当時は南関東競馬でバリバリ乗っていましたよね。勉強の時間を取るのは大変だったのではないですか?

戸崎そうなんですよ。それで、厩舎関係者のみなさんにも協力していただいて、朝に勉強の時間を作りました。

藤原大井は基本的にナイターですよね。朝の勉強をこなして、夜は競馬。とても大変でしたね…

戸崎だんだん慣れていきましたよ。でも、ず~っと教科書は持ち歩いていました。いつも、見られるようにって。気になってしょうがないんですよ。

藤原そのJRAの騎手免許試験に2013年に合格なさいました。移籍されて、戸惑ったことや苦労したことはありますか?

戸崎それ以前からJRAのレースに乗っていたので、調教師さんやジョッキーさん、厩舎スタッフのみなさんには、顔を知ってくれている方がたくさんいました。だから、そういう意味での苦労はなかったですね。ただ、芝に乗る時は、気をつけていました。

藤原あっ、地方競馬はダートがほとんどですよね。

戸崎そうなんですよ。ダートの行け行けの競馬とは違うし、芝の反応は速いだろうからソフトにとか色々と考えましたね。でも、結局は一緒だなと。

藤原どういうことですか?

戸崎競馬の基本は変わらないので。そこを大事に乗っていけばいいんだと気がつきました。

馬を気持ちよく走らせること

藤原基本の競馬に立ち返るって大事ですね。そのほかに、戸崎さんが大事にしていることってありますか?

戸崎馬を気持ちよく走らせることですね。馬にとってレースってキツいことだと思うんです。だから、馬によってはレース前に嫌がる素振りを見せたり、逆に気合が入り過ぎたりする。それを、うまくなだめて、競走に気持ちを集中させたいんですよね。

藤原馬の気持ちって、どんなところからキャッチするんでしょう?

戸崎感覚的な物なのですが、背中の感触や手綱などから「いま、集中してるな」とか。最高にいいときは、オーラみたいなものを感じます!

藤原最近で、その好感触を感じ取った改心のレースはありますか?

戸崎例えばですが、今年3月の中山で行われた総武Sですね。ヴァンヤールという馬に乗って参戦しました。返し馬で凄く良い雰囲気だったんで、「これは、いける!」と。でも、前半はアレレってなりましたね。進みがあまり良くないし、良いと感じたのは勘違いだったかな?って。

藤原スタートして後方3番手を追走しました。向正面半ばで上がって行くまでは、まだ探っていたということですね。

戸崎そうですね。今、考えれば、前半のペースが速かったんだと思います。でも、向正面半ばを過ぎたあたりで全身を使って上がって行ったので、前を追いかけました。もう、走りっぷりが全然違いましたね。もともとのポテンシャルも大事ですが、その日の状態がレースにかなり影響するんだと、改めて感じたレースでした。

構成:スポーツ報知 志賀浩子
Photograher:山口比佐夫
広報担当:IDEO

藤原 菜々花ラジオNIKKEIのアナウンサー。担当番組:「中央競馬実況中継」「ななかもしか発見伝!」「こだわり羽生結弦セットリスト」等

※この記事は 2025年4月1日 に公開されました。

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