きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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メルボルンCのアドマイヤラクティは可哀想なことをしました。馬主さん、生産・育成牧場、厩舎スタッフの皆さんの無念を思うと心が痛みます。お悔やみを申し上げます。

勝ったのはドイツ産馬のプロテクトショニストでした。ドイツの誇りモンズーンの血統ですね。昨年のアスコットゴールドCを勝ったエリザベス女王陛下所有のエスティメイトもモンズーン産駒でしたが、とにかく長い距離には強いですね。ドイツの無骨で頑健なイメージそのままに丈夫に走り続けてくれます。これもサラブレッドとしての重要な美質です。父系を遡ると、1919年生まれのイギリス産馬ブランドフォードに遭遇します。生まれつき右前脚が屈曲しており、両前脚の長さが違うという大きなハンデを背負っていた馬で競走馬としては大成できませんでした。しかし種牡馬としては素晴らしく世界中にその枝葉を広げることになります。ブランドフォードからモンズーンまで七代百年近く継続すること自体が優秀さの証明ですね。日本では1960年代に皐月賞とダービーの二冠を制したコダマが、ブランドフォードの4×3、奇跡の血量ということで一躍有名になっています。脚の曲がった馬の子孫が世紀を超えて走り続けいる姿に感動すら覚えます。馬は丈夫で健康が一番、そんな思いにとらわれます。

アドマイヤラクティは日本の重賞はG3ダイヤモンドSしか勝てませんでしたが、数々の長距離レースで名勝負を繰り広げてくれました。最後の最後にオーストラリアでも非常に格の高いG1コックスプレートを勝ったのは本当に凄いことです。日本のデルタブルースも立派ですが、歴代勝ち馬には最近ではソーユーシンク、遡るとキングストンタウン、ファーラップとオーストラリア競馬の歴史そのものの名馬が名を連ねます。その1頭に名を序した名馬アドマイヤラクティのご冥福をお祈りします。

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