きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ようこそいらっしゃいませ。

過酷な戦いの果てにたどり着いた夢舞台ダービーは、日本のすべてのホースマンが憧れる特別な栄誉ある舞台でその年ごとに異なる姿でファンを魅了してきました。

1997年。この年のクラシック戦線はレースごとに勝者が異なり、皐月賞では二桁人気馬が1〜3着を独占するなど、群雄割拠して天下を狙うダービーとなりました。どの馬にもチャンスありと思惑をぶつけ合う中、当時47歳の安田富男騎手はシルクライトニングに跨りおそらく自身最後のチャンスとなるであろうダービージョッキーを賭けた舞台に立ちます。

多数のG1馬を輩出していたブライアンズタイムの血。一線級を相手にひるむことなく結果を出してきたシルクライトニングの実力は、安田富男騎手とともに栄誉あるこの舞台で華開くのではと期待されました。

しかし発走時刻をすぎてもファンファーレは鳴りません。スタンドは騒然とし、しばらくしてアナウンスが流れました。史上最年長ダービージョッキーを掴みかけた安田富男騎手はレースの舞台へ立つ直前にシルクライトニングから下馬。シルクライトニングはゲート入り直前に発走除外となったのです。

その数分後、ダービーは劇的な英雄をこの舞台で誕生させます。皐月賞馬サニーブライアンが低評価を覆し、堂々と二冠達成。周囲の評価よりも馬を信じつづけた大西直宏騎手が「1番人気はいらない、1着だけ欲しいと思っていた」とレース後に語るシーンは多くのファンに迫るものがありました。

さて今年のダービーではどんな英雄が誕生するのでしょうか。栄誉ある舞台で歴代に恥じないレースをぜひ魅せてください。

×