きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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明日の中京メインG3プロキオンS(ダート1400m)は、“苦労人”ファリダットが遅咲きの花を咲かせないでしょうか。ノースヒルズマネジメントの前田幸治さんが愛馬ビリーヴをアメリカの自前の牧場に長期留学させ、名種牡馬キングマンボを配合して生まれたのがファリダットです。“苦労人”どころかピッカピカの良血馬として注目を浴びます。

ちょっと勝ち味に薄くクラシックには間に合いませんでしたが、3歳秋にはG3京阪杯、G2阪神Cを連続2着して重賞初制覇は時間の問題だと誰もが考えるようになりました。4歳の安田記念でウオッカ、ディープスカイの3着したときは、G1すら望める手応えを陣営は感じていたことでしょう。

しかし9カ月余りの休養から復帰した彼を待っていたのは茨の道。馬券にも絡めず見せ場のない16連敗を喫します。適距離マイルでも、偉大な母が得意とした1200mでも、舞台や条件を変えて試行錯誤を繰り返してもまったく目が出ず、ファリダットは終わった、そんな声すら聞こえてきました。

そのファリダットが覚醒したのはあの安田記念から3年後、舞台はターフからダートへと替わっていました。アイスカペイドという種牡馬がいます。ご存じのように“悲運の名牝”ラフィアンの半兄で前田さんの愛馬トランセンドの父系曽祖父に名前が見えます。この種牡馬もなかなかの“苦労人”でした。

というのも7歳上に種牡馬王ノーザンダンサーがいて、父ニアークティック、母父ネイティブダンサーという同配合のアイスカペイドは花嫁探しに大苦労したようです。このノーザンダンサー≒アイスカペイドの血を交配したのが、ビリーヴの母となるグレートクリスティーヌという牝馬です。父がノーザンダンサー直仔ダンチヒ、母父がアイスカペイド、ニアークティック3×3のきついクロスを持っています。

交配相手に制限のあったアイスカペイドが現在も父系を保っているのは驚異的なことだと思います。伝える血がよほど優れていたからに違いありません。ファリダットの“遅すぎた戴冠”を見守りたいものです。

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