きょうの蹄音競馬にまつわるちょっといい話

2011.2.15

ようこそいらっしゃいませ。

6人の定年引退調教師に混じって郷原洋行調教師が定年を前に勇退されると聞いて、とても複雑な思いです。調教師としてはマスコミをにぎわせるような活躍は残念ながら少かったのですが、騎手としては両手に余るほどの名勝負を残してくれました。

《郷原洋行五番勝負》みたいなことだとしたら、あくまで独断と偏見ですが、75年の春の天皇賞が一番目でしょうか。1975-04-29日(当時は天皇誕生日に開催するのが恒例でした)この日、圧倒的な1番人気に推されたのはキタノカチドキでした。チャンピオン種牡馬テスコボーイ産駒で雄大な鹿毛の馬体にはオーラを漂わせ、鞍上の武邦彦騎手ともども人気がありました。

皐月賞まで7戦無敗、ダービーは外枠の不利もあって敗れましたが、秋には復活して菊花賞を奪取、二冠に輝いた名馬です。このアイドルホースに対して郷原騎手のイチフジイサミは2番人気でしたが松永光雄厩舎の渾身の仕上げもあって、パドックでは周囲を圧倒するような素晴らしい出来映えに見えます。

そしてレースでは、敵は1頭と思い定めた郷原騎手の他馬は眼中にさえない徹底的なキタノカチドキマークに終始します。イチフジイサミがライバルを抜き去っとところがゴールでした。マッチレースといって良い素晴らしい迫真の名勝負でした。歴史と伝統に彩られたレースに120%の仕上げで臨んだ陣営、東西を代表する郷原・武両騎手の知略を尽くした攻防、今でも“いいものを見た”という感慨が残っています。

それにしてもイチフジイサミという馬、稀代の“アイドルホース殺し”、“史上最凶の刺客”でしたね。その2年前のダービーではタケホープが直線一気に抜け出し、何とか2着確保をともがくハイセイコーの内を力強く伸びて、競馬場中、そしてテレビの前のファンに悲鳴をあげさせました。時代を代表するアイドルホースを2頭も倒しているのです。しかも、これ以上はない大舞台での出来事でした。

こうした個性派の馬が少なくなっている気がします。百万馬券とか千万馬券とか馬が数字で語れすぎではないでしょうか。明日はもう1頭の“アイドルホース殺し”の話題をお届けします。どうぞよろしくお願いします。