きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

落ち着かない日が続きます。いかがお過ごしでしょうか。

今回の震災で東北地方と競馬の関係に思いを巡らしてみたのですが、東北は“日本競馬の台所”といっていいほど、大きな貢献をしてくれていたことに改めて思い至りました。

戦前に合計11回のダービーが行われていますが、内5頭は東北産のサラブレッドたちです。他の6頭はいうと千葉を中心とした関東産が5頭で、北海道産は戦前最後のダービー馬カイソウ1頭だけです。意外に思われるかもしれませんが、黎明期の日本競馬のあり様というものが良く分かります。

千葉には宮内省直轄の下総御料牧場がありました。岩手には三菱財閥が取り組んだ小岩井農場が君臨していました。今の貨幣価値にすると1頭が10億円とも20億円とも言われる超高額な種牡馬、繁殖牝馬をイギリスから競って輸入し、日本の馬産の質的向上に貢献してきました。

宮内省と大財閥というと何だかキナ臭い感じもするのですが、本場でも王侯貴族や成功した実業家がリーダーシップを執り、競馬を発展させてきたのだから当然といえば当然です。日本の場合は官民一体の大プロジェクトだったわけです。

1907年といいますから、まだ明治時代のことです。小岩井は20頭の繁殖牝馬をイギリスから輸入します。ビューチフルドリーマー、フローリスカップ、アストニシメント、今に子孫を残し続ける大基礎牝馬ばかりです。

彼女たちは極めて優秀でビューチフルドリーマーの曾孫カブトヤマ、ガヴァナー兄妹が第2回と第4回のダービー馬に。間の第3回は史上唯一の秋田産ダービー馬フレーモアもおり、小岩井のみならず東北産馬の質の高さを示しました。フレーモアの父シアンモアは小岩井に繋養されており、小岩井の頑張りが東北全体の馬産を活性化させていったのでしょう。

“日本競馬の台所”、東北地方の馬産については明日も考えてみたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

×