きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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昨日の菊花賞、大波乱の結末になりました。勝ったビッグウィークはこれしかないみたいな乗り方で本当に鮮やかな勝利でした。おめでとうございます。

それにしてもビッグウィーク、7月まで未勝利を走っていました。一昨年の勝ち馬オウケンブルースリも6月で未勝利脱出という遅咲きでしたが記録更新ですね。

ビッグウィークが直線で抜け出してきたとき、ある光景を思い浮かべたオールドファンも多いのではないでしょうか。40年前の菊花賞、タニノムーティエの切ない力走です。

彼はビッグウィークの谷水雄三さんの父上の信夫さんがオーナー、皐月賞、ダービーの二冠を圧倒的な強さで制し、三冠確実とさえささやかれていました。ところが彼は秋に入って深刻なのど鳴りをわずらい、春の面影がまるで見られないレースをつづけます。

「馬券は買わないでくれ」と信夫さんはいったそうです。迎えた菊花賞当日はどんよりと曇った空模様、湿った空気はタニノムーティエに味方すると考えたのでしょうか、それとも悲運の二冠馬へのせめてものエールだったのでしょうか。彼は5番人気に支持されます。

しかし結果は無情でした。四角手前でスッーと上がって見せ場をつくったのが精一杯、病魔に侵された名馬は11着に沈みます。

あれから40年、ダービーはタニノギムレット、ウオッカの親子制覇というドラマを見せてくれた谷水オーナーですが、菊花賞だけはこれまで無縁でした。ビッグウィークの直線の伸び脚はタニノムーティエが後押ししてくれたのかもしれません。

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