きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ようこそいらっしゃいませ。

《ダービー馬はダービー馬から》という格言があります。これまで日本では最近の例でタニノギムレットとウオッカ、ネオユニヴァースとロジユニヴァースなど6例が記録されています。《オークス馬はオークス馬から》とはあまり言いません。人気種牡馬となれば毎年200頭くらいを生産する牡馬に対して、牝馬は年齢1頭、生涯を通じても十数頭がせいぜいでしょう。単純比較すれば難しさは200倍というところです。

この大変な偉業を成し遂げた母娘が一組だけいます。83年のオークスを勝ったダイナカールが産んだエアグルーヴが13年後の96年に樫の女王を戴冠したのがそれです。

日本を代表する名牝系となったこの一族は、カールの長女カーリーエンジェルからエガオヲミセテ、オレハマッテルゼ姉弟を輩出しましたが、群を抜いて凄いのは三女のエアグルーヴでした。

オークスはもちろん天皇賞まで制した競走生活も凄いのですが、繁殖牝馬としてはさらに優秀なのはご存じのとおりです。惜しかったのは03年のアドマイヤグルーヴでしょうか。後にエリザベス女王杯を2度も勝ったこの名牝は、オークスに1番人気で臨みます。1.7倍と圧倒的な支持でした。

しかし彼女は出遅れが響いて7着に敗退してしまいます。この世代はスティルインラブが牝馬三冠を成し遂げていますが、三冠レースすべてで1番人気に推されたのはグルーヴの方でした。それほど能力が高く評価された馬であり、期待を集めた血統であった証明だと思います。

その後もエアグルーヴはポルトフィーノなど期待馬を出しますが、気性難などで大成できず“3代制覇”の夢はお預けのままでした。牡馬はフォゲッタブル、ルーラーシップが大活躍していますが、娘たちは期待が大きい分、評価も厳しく気の毒ですね。

世紀の名牝エアグルーヴも今年18歳になりました。そろそろ老境にさしかかっています。今回のオークスに挑戦するグルヴェイグはアドマイヤグルーヴ以来の“3代制覇”のチャンスを迎えています。2歳にはグルヴェイグの全妹も控えていますが、巡ってきたチャンスをものにしてほしいですね。

×