きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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明日の中山5R新馬戦は今季初の1800m戦となります。将来の王道路線を志す馬たちが集まるわけですが、タヂカラオーというサラブレッドもその1頭です。カタカナ馬名では意味が分かりにくいのですが、漢字に直せば《手力男王》と書きます。

手力男(タヂカラオ)とは古事記や日本書紀に登場する神様です。有名なエピソードなのでご存じでしょうが、スサノオの暴虐に怒った太陽神アマテラスが天の岩戸に隠れ、世界中が闇に閉ざされてしまう事件が起こります。

困り果てた神々は岩戸の前で大演芸大会を開き、アマテラスを誘い出そうとします。《世の中は闇のはずなのに何で皆んな笑ってるの?》と顔をのぞかせた彼女を掴み強引に引き出した男がいました。世に明かりを取り戻した日本初のヒーロー、彼が手力男です。

サラブレッドのタヂカラオーの父はリンカーン、彼もまた差別の闇に苦しんでいたアメリカ黒人などに平等という明かりを差し出したヒーローに由来した馬名ですね。自身はG1を遂に勝てなかったのですが、弟ヴィクトリーは皐月賞馬、叔父フサイチコンコルドはダービー馬、同じくアンライバルドも皐月賞馬とクラシック一族です。

ヒーロー繋がりの血統、馬名のタヂカラオー。スサノオの暴虐は暴風雨など天災のたとえだと言われています。大震災や原発問題など暗くなりがちな世相に、豪腕ならぬ豪脚で明るさを取り戻してくれるといいですね。

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