きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ようこそいらっしゃいませ。

馬名をつけるのは馬主さんの大きな楽しみの一つです。名は体を現すといいますが、本来、馬には馬名なんて理解できないはずなのですが、それっぽい走りをしたりするから不思議です。

明日の新潟5R新馬戦にエポキシという馬が出走します。父ディープインパクト、母シーズアンという血統です。半姉に藤沢和雄厩舎でオークス候補と期待され、今秋の飛躍が望まれるゼンノロブロイ産駒シーズンズベストがいます。シーズアンはイギリスで重賞勝ちのある実績馬で繁殖としても将来を嘱望されているのですが、今日の本題は別のところにあります。

エポキシのひとつ上の全兄にテンペルという牡馬がいます。松永幹夫厩舎で新馬を快勝し、2戦目に毎日杯を使われた素質馬で秋には一段と成長した姿を見せてくれるはずです。ディープインパクトはアメリカ航空宇宙局(NASA)が多くの謎に包まれた彗星探査のためのために打ち上げた宇宙船です。4億3100万キロの旅路の果てにめざしたのがテンペルです。ディープはテンペルに出会うために生まれてきた、そんな壮大な物語を1頭のサラブレッドに託したのは、当協会員でペルーサなどでおなじみの山本英俊さんでした。

エポキシはディープインパクトが最初のミッションを終えて改装され名前を変えられた宇宙船の名前です。実体はディープそのもの、生まれ変わりみたいなものです。クラブ法人のキャロットファームが馬主さんですが、山本さんが紡いだ物語がしっかりリレーされた格好です。

馬名にはそれぞれの馬主さんのさまざまな思い、願い、祈りが込められ、その数だけの物語が織物のように紡がれています。ひとつの文化であり、リスペクト(尊敬)されるべき存在です。馬主さんを超えて名付けられたテンペル、エポキシの物語はディープインパクトという偉大なサラブレッドに捧げられた大いなる尊敬と憧憬の叙事詩であると思えてきます。馬主さんの個性が伝わる馬名も悪くはないのですが、ホースマンがみんなで紡ぐ物語というのも味なものです。日本の競馬文化もなかなか大人になったなぁと感嘆させられました。

×