きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ようこそいらっしゃいませ。

3連休の中日、いかがお過ごしでしょうか。台風の影響が心配ですが、いまのところいいお天気が続いています。このまま気持ちの良い連休になればと祈っています。

さて、先日のセレクトセールですが参加された方々に聞いてみると、『気持ちの良い、いいセールだった』という声が大多数のようです。購買されるのはいわゆる“富裕層”に属する人たちなのですが、一昔前までは、儲けたお金をさらに増やすため土地とかビルなどに不動産投資するとか、資産運用という考え方が一般的だったようです。せり市もそんな考え方が尾を引いてサラブレッドビジネスというような言葉に象徴されるようないわば資産運用思想が少なからず影を落としていました。

ところが“成熟社会”が進んだせいなのでしょうか。“富裕層”の方々は“運用”とか“投資”とかいわば資産の量的な拡大を求めるのではなく、自分の生活の質的な充実に目をやるようになってきます。“富裕層”も“一般庶民”も自分の人生に与えられた時間は同じです。その中で、より充実した濃密な時間を過ごすことに意義を見い出し、そんなライフスタイルの一環として競馬を考えるようになってきました。

エアグルーヴの2010(父ディープインパクト)が象徴的でした。走る走らないだけではなく、その先の繁殖生活まで含めて、長いスパンで競馬を楽しむ対価が3億6000万円ということでしょう。エアグルーヴという偉大な牝馬の生涯を振り返っても(進行中ですが)アドマイヤグルーヴに始まり、現役のフォゲッタブル、ルーラーシップ、彼らがどれほど多くの人々をワクワクさせてきたか、その価値はお金で計れないものがあると思います。

あえて投資という言葉を使うなら、これは“感動投資”でしょうか。馬主さん個人の楽しみはもちろんなのですが、世の中の多くの人々をワクワクさせたり、ドキドキさせたり、ときにはガッカリさせることもあるのでしょうが、それも含めて“競馬のチカラ”みたいなものへの信頼がここに感じられます。

ここから物語がはじまって、ファン一人一人の中でそれぞれにさまざまな物語の続きが紡がれて夢の裾野を広げていきます。それが“競馬のチカラ”なんだろうと考えています。

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