きょうの蹄音競馬にまつわるちょっといい話

2011.1.4

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わずか2センチ、有馬記念は史上最短のハナ差決着でしたが、見た目にもっと際どかったのは1999年の有馬記念だと思います。グラスワンダーとスペシャルウィークの一騎打ちです。

1番人気はグラスワンダー。前年の有馬記念を制覇して以来、ときに不可解な凡走を見せることもあった馬が抜群の安定感を示すようになり王者の風格をただよわせます。

2番人気がスペシャルウィーク。どうしてもダービーだけは勝てなかった武豊騎手にダービー初制覇をもたらした名馬です。この年は春秋の天皇賞とジャパンCとG1を連勝して世代のチャンピオンを有馬で証明しようと出走してきました。

レースはスローに流れます。グラスワンダーは中団にどっしり構え、スペシャルウィークはグラス1頭だけをマークしています。早くも一騎打ちの様相がスタンドからもうかがえます。二周目の3コーナーでレースは激しく動き出します。

グラスがテイエムオペラオーなど好位勢を引き連れてスパート、スペシャルも遅れることなく追撃を開始します。直線坂上で抜け出したグラスをスペシャルが猛追、ハナ面を揃えたところがゴールでした。見た目にはスペシャルウィークの勢いが勝っていたかも。武豊騎手は“勝った”、的場均騎手は“負けたかも”そう思ったそうです。それほど際どい勝負でした。何度ターフビジョンを見直しても分かりません。

長い写真判定の末、7番、3番の順にランプが灯りました。こんな言葉があるのか、勝ち負けを超えた名勝負でした。好調時のグラスワンダーの底力は計り知れないものがあります。ハナ差は彼のサラブレッドとしてのプライドでしょう。スペシャルウィークは今から思うとちょっとローテーションが過密だったかもしれません。でもチャンピオンらしい堂々たる戦いぶりでした。

しかしこの年も両馬に年度代表馬の座は渡りませんでした。凱旋門賞2着などフランスで大活躍した同期のエルコンドルパサーがいたからです。ただ1頭だけを選ばねばならない賞の残酷さです。しかし、この時代、歴史に残る“名馬の時代”だったと思います。

さて、2010年の年度代表馬、ブエナビスタが父スペシャルウィークの無念を晴らすのか?フランスで一変したナカヤマフェスタなのか?それとも新世代ヴィクトワールピサなのか?いずれにしても新しい“名馬の時代”の到来が予感されます。