きょうの蹄音競馬にまつわるちょっといい話

2011.8.29

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土曜日の小倉、9Rひまわり賞で興味深い“事件”が起きました。5着に入線したカシノエルフの日吉正和調教師が、3着のテイエムハゼンカゼに直線で走路妨害されたとして異議申し立てを行ったというのが“事件”のあらましです。

到達順位の確定前であれば、馬主、調教師、騎手は3万円払えば異議申し立てができるそうです。大相撲なんかでも勝負審判以外に土俵下で待機中の力士が物言いをつけるシーンをときたま見かけますが、神ならぬ身の人間が裁決するのですから、こうした異議申し立てシステムはあって良いと思います。

“異議申し立て”というと大げさになりますが、日吉調教師には“確認”の意味もあったのでしょう。ちなみにカシノエルフは1番人気でしたから、馬券を持っているたくさんのファンのためにも不透明感の残らぬよう“確認”する必要があったと思います。

もちろん異議申し立てされる側の馬の馬券を持っているファンも少なからずいるのですが、そこを避けて通っては公正な裁決の威厳は生まれてこないでしょう。日吉調教師は今年から馬を出走させている新進トレーナーです。39歳の若さですが勇気ある見識に敬意を表したいです。

“競馬サークル”という言葉があります。競馬というスポーツは、馬主、調教師、騎手、厩務員、さらには牧場関係者など多くの人の利害がからんでいます。調教師の目線から言えば、進路妨害した馬の馬主があす自分の厩舎に馬を預託してくれるかもしれないとか、当該馬のトレーナーが先輩格にあたるとか、いろんな人間模様がからみあっていて当然でしょう。“波風立てたくない”というのが本音であって不思議はありません。

競馬はもともと馬主、生産者、調教師、騎手などホースマンと呼ばれる誇り高い人々の集まりです。ある意味、その方々の名誉と矜恃をかけた戦いでもあるわけです。そこが競馬の奥深い面白さになっているのですか、幸か不幸か日本競馬は馬券売上にその根幹を委ねるという世界的にも突出して優秀な仕組みを完成させました。もうサークルの中だけですべてを解決するというわけにいきません。

そういう視点からは今回の“異議申し立て”は良かったと思います。日本競馬の運営上の仕組みに変わりがない限り、もっともっと“開かれた競馬”になっていかないと困ります。“開かれる”と波風も立つし多少の混乱も避けられないのでしょうが、“事なかれ主義”よりはファンの納得を得られるでしょう。JRAはむしろ“ファンの代弁者”であるべきだとすら思います。