きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

日本馬が世界を席巻した日

12月9日は、福永 祐一 騎手の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
今でこそ日本調教馬が海外のビッグレースを勝つ光景は珍しくなくなっていますが、“日の丸ホース”が世界に確かな存在感を刻み込んだのは、2001年に開催され21世紀最初となった香港国際競走の舞台だったでしょうか。その年は、来年から調教師へと転進して新たな風景を切り拓く福永祐一さんがエイシンプレストンで香港マイルを勝ち、海外G1初制覇を成し遂げています。香港カップでは四位洋文さんを背にしたアグネスデジタルが快勝、中央・地方・海外とまったく異なるステージでG1メダルを奪取する快挙を成し遂げています。21世紀はジャパンホースの時代になるかも、そんな夢のような思いがシャティン競馬場に漂いました。

しかし今も忘れられないのは、香港ヴァーズで武豊騎手とステイゴールドが演じた“奇跡のラストラン”でした。ステイゴールドはご存じのようにG1レースの常連で、宝塚記念のサイレンススズカ、天皇賞(秋)のスペシャルウィークなど歴史的名馬のそれぞれ2着を占め、通算でG1レースで2着4回と“いぶし銀の名脇役”、残念ながら銀メダルコレクターとして知られました。孝行息子の三冠馬オルフェーヴルが“世界の頂点”凱旋門賞で2度も2着に泣いたのも、父譲りなのかという気持ちになります。もっとも残念だったのは、その年の春に行われたドバイシーマクラシックでした。ガリレオを破る大金星で年度代表馬に輝き欧州チャンピオンに君臨したファンタスティックライトを激闘の末にハナ差破ったのですが、無念にも創設され間もなかったシーマクラシックは未だG2格付けに止まっており、G1昇格は翌年のことでした。

この時点でステイゴールドは既にG1ホースに匹敵する実績と風格を備えていたのですが、池江泰郎調教師にしてみればG1の金メダルで引退の花道を飾ってやりたいのが人情でしょう。しかしドバイから帰っても調子が上がらず21世紀最初の香港国際競走でラストチャンスに挑むことになります。最後の最後で心身とも充実の極みに達したステイゴールドは、武豊騎手の励ましに応え、後に出現するディープインパクトを思わせるように、直線を飛ぶように駆けてG1のゴールに飛び込んだのです。香港の“お家芸”であるスプリント以外は完全制覇、日の丸ホースが世界に飛び立った日と覚えておきたいものです。今年は4カテゴリーすべてに日本馬が出走します。地元香港勢は怪物級マイラーのゴールデンシックスティ、昇龍の勢いの上がり馬ロマンチックウォリアーなど抜きん出て優秀な存在が強力な迎撃体制で待ち受けますが、層の厚さでは日本勢に軍配が上がりそうです。21世紀の幕開けに見た誇らしくも衝撃的な風景を再び見ることができるでしょうか。

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