きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

歌人“京雅”さんからの和歌(沓冠)  秋華賞

先週は牝馬クラシック最終戦の秋華賞(GI)が行われました。牝馬三冠を目指した女王スターズオンアースの牙城を崩したのは前哨戦の紫苑ステークス(GIII)も快勝しているスタニングローズでした。覆面歌人の京雅さんからは、この秋華賞の和歌が届きました。和歌(沓冠)に隠れたメッセージを読み解き、お楽しみください。

秋華賞 京雅

馬場で無比
ラストのハナが
伸び自信
力があるな
ガッツで駆ける

隠れたメッセージは「ばらのちが ひがんなる → バラの血が 悲願なる」です。
馬()場で無比(
ラ()ストのハナが(
伸()び自信(
力()があるな(
ガ()ッツで駆ける(


<京雅さんの和歌【沓冠】の解説>
牝馬三冠を目指すスターズオンアースと、それを阻止すべく集結した精鋭たち、という構図となった第27回秋華賞。
注目のスターズオンアースはスタート後、やや挟まれる形で後方に。ライバル筆頭に挙げられるナミュール、スタニングローズ、アートハウスはそれぞれ中団、先行、先行と、人気各馬は縦にばらける展開となり、仕掛けどころの様子をジョッキー同士が探っているような感じも受けます。
4コーナーを回ってもなお、後方から3番手にいるスターズオンアースにスタンドがどよめく中、まず先頭に踊り出ようとしたのはアートハウス。しかし、阪神の坂が堪えたのか、伸びあぐねているとスタニングローズがガッツ溢れる走りで、急坂を力強く駆け上がり先頭へ。外からナミュール、そして遅れて馬群からスターズオンアースが猛追しますが、スタニングローズが先行からロスなく抜け出す競馬で伸び切り、牝馬三冠の最終戦を制しました。
10番人気ながら2着に奮闘したオークスから休養を挟み、紫苑ステークスを快勝。ひと夏を越えて、実力も自身も兼ね備えたスタニングローズの顔(ハナ)は自身に満ち溢れている印象でした。

スタニングローズは父キングカメハメハ、母ローザブランカという血統。この牝系はバラ一族として競馬ファンの間では親しまれており、そのバラ一族に待望の牝馬GI馬が誕生しました(牡馬ではローズキングダムがジャパンカップなどを制している)。まさに、「バラの血が悲願なる」という隠れたメッセージがそのまま体現されました。
また2019年に亡くなった父キングカメハメハにとってはこれがラストクロップとなる世代でのGI馬誕生。さらに鞍上の坂井瑠星騎手もJRAGI初制覇と、人馬・血統の悲願が集約された勝利でした。


※ 【沓冠】の解説
和歌の折句の一種。意味のある10文字の語句を、各句の初め(冠)と終わり(沓)に1字ずつ詠み込んだもの。「沓」とは、体の一番下に着けるもので、「冠」とは、一番上に着けるものであることから、「沓冠」といわれる。 平安貴族の「言葉遊び」で、短歌の中に、本文とは違う言葉を忍び込ませて、和歌の表面とは違ったメッセージを密かに伝えているところが、面白いところ。

※歌人“京雅”さん
長く競馬サークルに住みついている覆面歌人。一昨年から、当協会ホームページで連載開始。渾身の一首をお届けするので皆さんも、是非、謎解きに挑戦してください。

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