きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

コロナ禍を一掃する競馬が来る!

ようこそいらっしゃいませ。

ハイレベルで知られる愛チャンピオンSなどアイルランドのチャンピオンズデー、本番と同コース同距離で施行されるロンシャンのトライアルデーなど、チャンピオンシップの世界最高峰に聳え立つ凱旋門賞に向けての前哨戦が、先だっての週末であらかた終了しました。これを受けて、IFHA(国際競馬統轄機関連盟)は現時点での実力を評価する世界ランキングを発表しています。コロナ流行以来、長い伝統を受け継ぐレーシングプログラム通りに番組編成が進められない時期が続いて、ちょっと特殊な数年間を過ごしてきましたが、今回のレーティングを見る限り、競馬の正常な運営とサラブレッドの真の実力は、コロナ前に戻ったような気がします。油断は禁物ですが、まずはホースマンの皆さんとファンの方々の、粘り強く諦めなかった頑張りの賜物でしょう。本当に良かったです。

このことを実感させられたのは、アメリカのダート競馬ですが、フライトラインというとんでもない怪物が出現し、IFHAは目の玉が飛び出るような彼のパフォーマンスに対して139ポンドという滅多にお目にかかれないレーティングを進呈しています。これは四半世紀以上前の96年に名馬シガーに贈られたダート史上最高の139ポンドを大幅に上回り、フランケルが記録した140ポンドの歴代最高峰に迫るものです。この“新怪物”フライトライン、なにしろデビュー戦から馬なりで13馬身余もちぎったかと思えば、次が12馬身と4分の3、3戦目でG1マリブSに挑戦し、距離1400mも初体験でしたが11馬身半と影も踏ませぬ快速ぶりを披露します。脚部不安で半年ほど休養した後、さらに距離を伸ばして“伝統のマイル戦”G1メトロポリタンHは芝並みの1分33秒59をノーステッキでマークして圧勝を飾ります。唯一不安があるとすれば、1600mまでしか経験のない距離ということになりますが、前走でデルマー2000mのG1パシフィッククラシックでは19馬身余もちぎり捨て、競馬になりませんでした。もう死角などどこにもありません。ブックメーカー大手は、11月に行われる世界最高峰のダートチャンピオンシップ「ブリーダーズカップクラシック」の前売りオッズを1.67倍に設定しています。

ちなみにヨーロッパの競馬シーンの話題を独占する10戦10勝のバーイードはレーティング135ポンドの評価でした。その他の地域では、オーストラリアのネイチャーストリップが126ポンドと離れた3位にランクイン、日本では6位タイのタイトルホルダーが124ポンドで追いますが、フライトラインとは15ポンド、バーイードとも11ポンド差と大きく水を開けられています。バーイードはエリザベス女王の主戦厩舎を任されるウィリアム・ハガス調教師と陣営が熟慮を重ねて、凱旋門賞ではなく、偉大なフランケルと同様に英チャンピオンSでラストランを迎えるようです。こうなると凱旋門賞の価値が微妙な感じになりかねませんが、ダートでもなく、同じ芝であってもマイルでも中距離でもなく、古来から尊称として伝えられる“チャンピオンディスタンス”2400mを舞台に争われる凱旋門賞の価値が揺らぐことはないでしょう。タイトルホルダー以下、どの馬も胸を張って誇りに満ちたゲートインをしてくれると思います。

×