きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

名馬たちの饗宴

ようこそいらっしゃいませ。

荘厳さと華やかさが織り成す競馬絵巻・ロイヤルアスコットたけなわの今週ですが、今年はエリザベス女王の即位70周年(プラチナムジュビリー)を祝賀するプレミアムな開催となり、国民を挙げて大層な盛り上がりに湧いています。火曜から土曜までの5日日に8つのG1を含む全35レースが組まれていますが、故障でもない限り有力馬がこぞって出走に前向きで充実した見どころ満載の番組が並びます。初日の第1レースは、300年余り前にアスコット競馬場を創建したアン女王の先見の明を顕彰するG1クイーンアンSの名誉ある指定席になっています。過去にもアン女王の遺徳を偲んで名牝ゴルディコヴァ、史上最強馬フランケルなどが参戦している名レースですね。今年はここまで7戦7勝でG1を3連勝中、IFHA(国際競馬統轄機関連盟)のランキングで世界一に叙されているバーイードがゲートインし、ファンを大喜びさせました。ご存じのように鞍上が持ったまま馬なりで先頭に立つと、そこからノーステッキで8連勝のゴールに飛び込んで、ようやくコロナ以前に戻りつつあるスタンドのファンを「フランケルの再来!」と興奮の渦を巻き起こしました。この先どこまで勝ち進むのか、世界の眼がこの一頭に注がれています。

その興奮も冷めぬ初日の第3レースでも、ファンの度肝を抜くようなパフォーマンスが飛び出しました。直線1000mの電撃戦G1キングズスタンドSは、遥々オーストラリアから遠征してきたネイチャーストリップが徐々に加速しながら先頭を奪うと、ゴール前の素晴らしい瞬発力で一気に突き放して4馬身半の圧勝を飾りました。電光石火の1000mで4馬身半というのは、中長距離なら“大差”に匹敵すると言われる決定的な力の違いを示すものです。スプリント王国の伝統はしっかりと受け継がれています。順調なら、最終日のG1プラチナムジュビリーSに中3日の強行軍で参戦します。見逃せない大一番になりそうです。

2日目の日本からシャフリヤールが参戦した G1プリンスオブウェールズSは、残念な結果になりました。日本では経験できない“自然の要害”のようにそびえ立つタフな馬場に敗因を求める専門家が多いようです。勝ったステートオブレストはマイペースで逃げて、追撃を許さずそのまま先頭でゴールしました。翌3日目に同距離で行われたG3ハンプトンコートSは、人気を集めた女王の愛馬リーチフォーザムーンが2番手追走の展開になり、前日のリプレイを見るような逃げ切り劇で決着して女王を悔しがらせています。どうやらタフなだけではなく、前が止まらないスピード優位のコンディションでもあったようです。競馬というのは、つくづく難しいものですね。今夜は4日目、明夜半の最終日も残っています。どうぞ、ロイヤルアスコットのハイレベルな熱戦をご堪能ください。

×