きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

歌人“京雅”さんからの和歌(沓冠)  優駿牝馬・オークス

春のクラシック戦線は佳境を迎え、牝馬は桜花賞に続き2戦目となる優駿牝馬・オークス(GⅠ)が東京競馬場の2400mを舞台に先週行われました。覆面歌人の京雅さんからは、このオークスの和歌が届きました。是非、隠れたメッセージを読み解いてください。(メッセージの答えは最後に)

オークス 京雅

乙女来い
馬競る旅路
歓声に
抜群末脚か
伸びて爛漫

隠れたメッセージは「おうかばの いじにかん → 桜花馬の 意地二冠」です。
乙()女来い(
馬()競る旅路(
歓()声に(
抜()群末脚か(
伸()びて爛漫(


<京雅さんの和歌【沓冠】の解説>
桜花賞馬のスターズオンアース、人気では他馬に譲りましたが、着順では一冠目を制した意地を見せつけて大外から抜群の末脚で牝馬二冠(桜花賞・オークス優勝)を達成しました。
競走馬の生涯に一度しか出走できない乙女の祭典オークス。1句目「来い」には、馬主や関係者、応援するファンの歓声の意味合いと、3歳牝馬の頂きに「恋」焦がれる競走馬の心情の掛詞になっています。そして、5句目の「爛漫」は花が美しく豊かに咲き乱れる様子を表す言葉で、まさに3歳の乙女スターズオンアースが、意地の二冠を達成して、切望していたオークスのタイトルを手にした様子にぴったりの表現となっています。

ゴール板を突き抜けた直後、鞍上のC.ルメール騎手はいつにも増して激しいガッツポーズで喜びを露わにしました。レース前、放馬による影響で15分発送が遅れ、どよめきの中で行われたオークスでしたが、「この馬の家族を良く知っている。距離は心配していなかった。すごくうれしい、安心しました」と、スターズオンアースを信頼できた背景に、スタセリタ(スターズオンアースの祖母)で制した仏オークス、ソウルスターリング(スターズオンアースの叔母)と優勝したオークスの経験があったことが言葉からも読み取れます。ブラッドスポーツと呼ばれる競馬の醍醐味が、騎手と競走馬(とその家族)から感じ取れる一戦でした。

さて、来週はいよいよ東京優駿・日本ダービー。世代の頂点を目指す戦いに今から心躍ります。


※ 【沓冠】の解説
和歌の折句の一種。意味のある10文字の語句を、各句の初め(冠)と終わり(沓)に1字ずつ詠み込んだもの。「沓」とは、体の一番下に着けるもので、「冠」とは、一番上に着けるものであることから、「沓冠」といわれる。 平安貴族の「言葉遊び」で、短歌の中に、本文とは違う言葉を忍び込ませて、和歌の表面とは違ったメッセージを密かに伝えているところが、面白いところ。

※歌人“京雅”さん
長く競馬サークルに住みついている覆面歌人。一昨年から、当協会ホームページで連載開始。渾身の一首をお届けするので皆さんも、是非、謎解きに挑戦してください。

×