きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

歌人“京雅”さんからの和歌(沓冠)  天皇賞(春)

先週は伝統の天皇楯を巡る戦い、天皇賞(春)(GI)が行われました。3200mというJRAのGIの中で最も長い距離で争われるステイヤーたちの戦い。体力・持久力自慢の18頭が集まった中、1頭悠然と抜け出したのは、昨年の菊花賞(GI)馬タイトルホルダーでした。覆面歌人の京雅さんからは、タイトルホルダーが制した天皇賞(春)の和歌が届きました。和歌(沓冠)に隠れたメッセージを読み解き、お楽しみください。

天皇賞(春) 京雅

一騎出た
技量も上手
余裕見せ
馬リズム良い
はや逃げ制覇

隠れたメッセージは「いぎようは たてせいは → 偉業は 楯制覇」です。
一()騎出た(
技()量も上手(
余()裕見せ(
馬()リズム良い(
は()や逃げ制覇(


<京雅さんの和歌【沓冠】の解説>
菊花賞馬タイトルホルダーと昨年の天皇賞(春)2着馬ディープボンドの2強の様相で盛り上がりを見せた今年の天皇賞(春)。決着こそ2頭のワンツーフィニッシュとなりましたが、優勝したタイトルホルダーが、スタートから一騎飛び出し、終始レースを引っ張り、強さを見せつけた一戦となりました。スタートで落馬したから馬が先団におり、難しい状況となりましたが、タイトルホルダーは先頭をリズムよく運び、最後の直線でも余裕がある走り。最後は7馬身、ディープボンドを突き放す圧勝の逃げ切り勝利を収めました。
タイトルホルダーの鞍上は昨年の有馬記念(GI)からコンビを組む横山和生騎手。先に弟の横山武史騎手がタイトルホルダーと菊花賞を制していましたが、兄の横山和生騎手も、近年、技量も上がり、着実に勝ち星を積み重ね(2021は79勝)、有馬記念で先に騎乗予定馬がいた弟に替わり、タイトルホルダーとコンビを組むことになりました。有馬記念は5着となりましたが、今年初戦の日経賞(GII)でもコンビを継続し、しっかり優勝して結果を残し、今回、天皇賞優勝の大仕事を成し遂げ、自身初のGI制覇を達成しました。

「偉業は 楯制覇」という隠れたメッセージには色々な意味が隠されています。
1. ステイヤー戦を盛り上げたい、と語っていた山田弘オーナーの言葉通り、3000mを超える菊花賞、天皇賞(春)の両方を逃げ切りで制したタイトルホルダーの偉業
2. 弟・横山武史騎手と兄・横山和生騎手が同じ競走馬タイトルホルダーでGIを制し、現役兄弟でGIタイトルを掴んだ偉業
3. 祖父の横山富雄元騎手は1971年のメジロムサシで、父・横山典弘は1996年のサクラローレル、2004年のイングランディーレ、2015年のゴールドシップで、天皇賞(春)を制しており、今回、横山和生騎手の勝利で、史上初の天皇賞(春)親子3代制覇の偉業

――競馬はブラッド(血統)スポーツと呼ばれておりますが、その魅力が競走馬の血統のみならず、騎手の系譜にも紡がれていることを証明する素晴らしい天皇賞(春)だったのではないでしょうか。


※ 【沓冠】の解説
和歌の折句の一種。意味のある10文字の語句を、各句の初め(冠)と終わり(沓)に1字ずつ詠み込んだもの。「沓」とは、体の一番下に着けるもので、「冠」とは、一番上に着けるものであることから、「沓冠」といわれる。 平安貴族の「言葉遊び」で、短歌の中に、本文とは違う言葉を忍び込ませて、和歌の表面とは違ったメッセージを密かに伝えているところが、面白いところ。

※歌人“京雅”さん
長く競馬サークルに住みついている覆面歌人。一昨年から、当協会ホームページで連載開始。渾身の一首をお届けするので皆さんも、是非、謎解きに挑戦してください。

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