きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

敬意と顕彰の嵐

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競馬大国最大の“競馬の祭典”ブリーダーズカップ(BC)デーで芝牝馬の頂点レースG1BCフィリー&メアターフで歴史的金星を挙げたラヴズオンリーユー、その足でダイレクトに香港入りし、春のG1クイーンエリザベス2世Cに続いてG1香港Cを差し切り有終の美を飾りました。この年は6戦4勝中G1を3勝と目覚しい活躍を見せたのですが、ドバイ、香港、アメリカ、さらに香港と世界を雄飛した彼女の健気(けなげ)な頑張りに、各国のホースマンが深い敬意を表してくれています。お膝元のJRAは「最優秀古牝馬」の称号を贈り、彼女が無敗でオークスを制した思い出の東京競馬場で「引退式」を今週日曜に執り行うなど粋な図らいでその功績を讃えています。

アメリカのホースマンも、はるばるアジアからやって来てゴール前で相棒・川田将雅騎手の励ましに応えるように勇敢に狭い馬群を割った彼女のチャレンジに拍手と笑顔と最高の勲章であるエクリプス賞の芝牝馬チャンピオン部門でダート牝馬チャンピオン部門の僚馬マルシュロレーヌとともにファイナリストに推薦しています。大変な栄誉です。さらに香港ジョッキークラブの皆さんは、礼を尽くし心のこもったイベントで彼女に別れを告げるようです。東京での引退式当日のほぼ同時刻に「ラヴズオンリーユーハンデ」と銘打った冠レースが発走します。サラブレッドとして生まれて、これ以上の名誉はないでしょう。春はドバイから香港へ、秋はアメリカから再び香港へとまるで香港在厩馬のように振る舞う彼女とチーム矢作芳人厩舎の皆さんにフレンドリーな情を抱いているようです。彼女ほど広く愛される馬も珍しですね。

もともとが一口クラブのDMMドリームクラブの所有馬で、常識を打ち破る1万口という大型ファンドで募集された馬です。ファンなら誰もが憧れる超高額な血統馬・素質馬を多数の会員に分割することで手軽に買えるようにした斬新なビジネスモデルが話題を呼びました。現在は2000口に落ち着いて来たようですが、口数としては十分に多く、事業コンセプト自体に変化はありません。ライトな競馬の楽しみ方として、馬主さんへの入り口として、意義のある試みだと思います。いわばラヴズオンリーユーは、そうした競馬大衆化のアイドルであり、クイーンでした。今後も子どもたちを通じてファンを楽しませ喜ばせてくれるに違いありません。そうやって競馬は、世界は、繋がっていくのだと彼女は教えてくれているのでしょうか。

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