きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

番組改革の時代?

2月4日は、酒井 学 騎手、鮫島 良太 騎手、亀田 温心 騎手、高野 友和 調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

戦いの場で結果を残せるのは、厳密に言えば勝ち馬ただ一頭に過ぎないのですが、現下のようにコロナ禍にあっても、自らの能力を最高に発揮できる環境と条件を模索して海外遠征にチャレンジする人馬が絶えません。しかも昨今は朗報を届けてくれる“日の丸サラブレッド”が引きも切らず、ファンを驚きと歓びの渦に巻き込んでいます。日本馬にとって最大の難関とまで言われていたブリーダーズカップ(BC)のダート分野に初挑戦で一発回答を出したマルシュロレーヌ、アメリカでBCフィリー&メアターフを快勝し、日本にいったん帰国することもなく香港直行で香港Cを連勝したラヴズオンリーユー、本当に立派でした。同じ矢作芳人厩舎のリスグラシューもツアー最初の香港クイーンエリザベス2世Cこそ3着でしたが、次の香港からスタートして宝塚記念からコックスプレート、有馬記念まで日豪の最上級G1を3連勝したのは凄かったですね。矢作先生の辣腕(らつわん)ぶりも凄いですが、牝馬という生きものの生命力の逞しさ、奥深さを教えられました。

こうしてもたらされる朗報の数々は嬉しい限りですが、反面その分だけ国内G1戦線はコマ不足に陥りかねない弊害も起きてきます。JRAなど運営主体には頭の痛い話です。人気ホースが一時的にせよ“海外流出”するのは深刻な経営課題でしょう。海外の著名レースは競争相手となります。こうした国境をまたぐ“競合”は古くて新しい問題とも言えます。有名なのは、開催日が英ダービーと1日しか違わない仏ダービーが、まったく同条件の長距離2400mから中距離2100mへの変更に舵を切り、生き残りをかけた差別化に踏み切った“大冒険”です。クラシックの条件をいじるのは、その国の競馬の根幹に関わる“大事件”です。しかし“世紀の大冒険”は“吉”と出ます。とくに近年に至って勝ち馬から、ディープインパクト産駒スタディオブマン、凱旋門賞馬ソットサス、1着賞金11億円のサウジCを制覇したミシュリフ、そして昨年はヨーロッパ年度代表馬馬セントマークスバシリカと個性的な名馬を毎年のように輩出し続けています。かつては2400mを“チャンピオンディスタンス”と呼んでいた時代から、王座を争う戦いが芝ダートを問わず2000m級の距離で行われるようになっていた潮流の変化を読み切っていたのでしょうか?

ここまで大胆な挑戦は難しくても、賞金増額でレースの魅力をブラッシュアップする手法は頻繁に行われています。JRAはこれまで3億円だったジャパンCと有馬記念の1着賞金を今年から4億円に増額するそうです。開催時期が11月下旬と12月下旬に設定されていますが、実はこのど真ん中に香港国際競走が組まれています。日本から毎年多くの一流馬が参戦する人気カーニバルで、昨年も4レースに11頭が参戦し、香港Cのラヴズオンリーユー、香港ヴァーズのグローリーヴァーズが勝利を上げています。しかしここを使うと、よほどでなければJCも有馬も出走するのは無理です。100%の競合関係になります。開催時期をずらそうと試みても、世界のレーシングカレンダーは隙間なくギッシリ埋め尽くされていて、割り込むのは簡単ではありません。ただ4億円というのは、相当な高額賞金です。ダート分野の前出サウジCが約11億5000万円、同じくドバイワールドCの約8億円には見劣りしますが、芝では約3億7000万円の凱旋門賞を追い越すことになります。香港遠征組を呼び戻すといった短絡的な話ではなく、世界中から一流馬たちを呼び寄せる魅力的なストーリーが描ければ素敵なのですが。

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