きょうの蹄音競馬にまつわるちょっといい話

2011.9.20

ようこそいらっしゃいませ。

今週は“中山名物”オールカマーが行われます。オールカマー、一口で言えば“何でも来い”みたいなことです。サラブレッドとアラブの品種を超えて、中央馬と地方馬の所属の壁を超えて出走が認められました。“競馬の民主化”みたいなコンセプトがあったのでしょうか。

第1回は1955-10-16日に中山の2000mで開催されています。勝ったのは春のクラシックを脚部不安で棒に振ったメイヂヒカリで来るべき菊花賞への壮行レースのような形になりました。実際、彼はこのレースで皐月賞馬ケゴンを問題にせず、菊花賞ではダービー馬オートキツに10馬身の大差をつけて、誰が真のチャンピオンホースかを証明してみせました。

馬名はオーナーの新田新作さんが明治座社長だったからでしょう。明治座は今に続く大衆演劇のメッカで戦前の松竹経営から新田さんたちによってしがらみに捉われない独立系の劇場として、面白いものばかりを集める方針が受けて人気を集めたそうです。

新田さんはこの他にも力道山らと語らって日本プロレス協会を設立、戦後エンタテインメントの立役者として活躍します。演劇とプロレスと競馬が戦後の混乱を片隅からちょっと照らす、そんな時代のリーダーとして振舞ったのだと思います。

さて、メイヂヒカリは第1回オールカマー王者に君臨すると同時に、翌56年に創設された有馬記念(当時は中山グランプリと呼称)も圧倒的な強さで制覇し歴史に名を刻むことになります。第1回を勝つ馬は物理的に1頭だけしか存在しません。中山を代表する2つのレースのそれぞれ第1回を制覇したのは、偶然と言えば偶然、奇跡と言えば奇跡なのですが、戦後日本を元気づけることに一生を捧げた新田さんの思いの丈がメイヂヒカリというサラブレッドに結実したのでしょう。今年のオールカマー、どんな時代の思いが走るのでしょうか。