きょうの蹄音競馬にまつわるちょっといい話

2021.10.28

歌人“京雅”さんからの和歌(沓冠) 菊花賞

先週はクラシック三冠最終戦・菊花賞(GI)が42年ぶりに阪神競馬場で行われました。皐月賞馬エフフォーリア、日本ダービー馬シャフリヤールが不在の中、最後の一冠を手にしたのはタイトルホルダーでした。覆面歌人の京雅さんからはこの菊花賞の和歌が届きました。是非、隠れたメッセージを読み解いてお楽しみください。(メッセージの答えは最後に)

菊花賞 京雅

決めたいち
苦労打ち勝ち
さあハナを
駆け抜けた顔
凄い逃げ良い

隠れたメッセージは「きくさかす ちちをおい → 菊咲かす 父を追い」です。
決()めたいち(
苦()労打ち勝ち(
さ()あハナを(
駆()け抜けた顔(
凄()い逃げ良い(


<京雅さんの和歌【沓冠】の解説>
「最も強い馬が勝つ」といわれる菊花賞。皐月賞馬、日本ダービー馬不在の中、“最も強い馬”の座を求めて、フルゲート18頭がスタートしました。
タイトルホルダーはスタートから、鞍上の横山武史騎手が押して先頭に立ち逃げます。「今回はちょっと無理してでもハナにこだわっていました」と鞍上が語るように“位置”は“一番(先頭)”と決めてタイトルホルダーを促します。(1句目の“決めたいち”の“いち”は“位置”と“一”の掛詞)
あえてスローペースに落とさず、馬の行く気に任せてリズムよく逃げると、まさに、凄い逃げ、と表現がするのが相応しく、直線でも脚色衰えず後続を5馬身突き放して勝利しました。

隠れたメッセージに登場する“父”には、様々な意味が込められています。
まずは、鞍上の横山武史騎手が父・横山典弘騎手のセイウンスカイでの菊花賞制覇を彷彿とさせる華麗なる逃げでの優勝。横山武史騎手とタイトルホルダーの姿に横山典弘騎手とセイウンスカイの姿を重ねたファンも多かったのではないでしょうか。
そして、調教師・栗田 徹について。タイトルホルダーの母メーヴェは栗田 徹調教師の父・栗田博憲元調教師の管理馬。父が育てた牝馬の仔ということで、一層込み上げるものがあったでしょう。栗田 徹調教はこれが嬉しいJRA・GI初勝利となりました。
そして、最後は馬の話。タイトルホルダーの父・ドゥラメンテは今後の活躍が期待される種牡馬でしたが、ご承知の通り、今年の夏にわずか9歳の若さでこの世を去りました。ドゥラメンテは現役時代、皐月賞、日本ダービーと連覇をしながら、両前脚の骨折により三冠最終戦の菊花賞への出走は断念しました。亡き父の思いを乗せたタイトルホルダーの走りでした。
騎手・調教師・競走馬、それぞれの父の姿が背景に浮かぶ今年の菊花賞。素晴らしき走りの裏側をひも解くと、一層、素晴らしき勝利の余韻を感じられます。


※ 【沓冠】の解説
和歌の折句の一種。意味のある10文字の語句を、各句の初め(冠)と終わり(沓)に1字ずつ詠み込んだもの。「沓」とは、体の一番下に着けるもので、「冠」とは、一番上に着けるものであることから、「沓冠」といわれる。 平安貴族の「言葉遊び」で、短歌の中に、本文とは違う言葉を忍び込ませて、和歌の表面とは違ったメッセージを密かに伝えているところが、面白いところ。

※歌人“京雅”さん
長く競馬サークルに住みついている覆面歌人。昨年から、当協会ホームページで連載開始。渾身の一首をお届けするので皆さんも、是非、謎解きに挑戦してください。