きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

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“誰でも来い”オールカマー歴代の印象に残る馬をご紹介しています。昨日は第1回オールカマー馬にして第1回有馬記念馬、中山の歴史に不滅の光彩を放つメイヂヒカリのお話でした。

オールカマーらしいオールカマーと言えば、57年の第3回ですね。このレースには前年の牡馬クラシック勝ち馬が揃い踏み、皐月賞馬ヘキラク、ダービー馬ハクチカラに加えて、そのいずれも2着で最後の菊花賞で鬱憤を晴らしたキタノオーと豪華絢爛のメンバーが集結しました。しかしこのレースが盛り上がったのはそのためだけではありません。アラブの怪物セイユウが駒を進めてきたからです。

セイユウはデビュー直後こそモタつきましたが、4戦目から軌道に乗り15連勝、68キロを背負っての2着を挟んで、サラブレッド相手の七夕賞、福島記念を含む6連勝の快進撃。前走セントライト記念では1ヶ月後に菊花賞を制覇することになるラプソディー以下を問題にせず横綱相撲で押し切っています。まさにオールカマーの理念をそのまま体現した一戦ですが、アラブ対サラブレッドの“異種格闘技”というより、3歳最強馬が古馬3強にチャレンジするという構図です。

結果からいうと、さすがに歴戦の古馬サラブレッドは強く、キタノオーがハクチカラを半馬身抑えて優勝、セイユウはさらに2馬身余離された4着に敗れます。しかし皐月賞馬ヘキラクに先着したのは立派でした。

こうしたドリームマッチを実現してくれるオールカマーが長く人々の記憶に残り愛されてきたのは当然でしょう。弱いものが強者に立ち向かう図に判官びいきが働きます。日本的と言えば日本的な光景がそこにありました。日本では競走馬としてのアラブは絶滅してしまいましたが、怪物セイユウの名は歴史から消えることはないでしょう。これもオールカマーというレースがあったればこそですね。

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