きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

服喪のワールドカップ・ナイト

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モハメド殿下の兄であり、大きな影響力を広範に流布していた偉大なオーナーブリーダーとして世界競馬の発展に貢献されたハムダン殿下が亡くなられました。アラブ首長国連邦(UAE)は大統領令により、すべての政府機関を閉じる3日間の「服喪期間」と定める決定をしています。今年のドバイワールドカップ・ナイトは、ハムダン殿下追悼の服喪の最終日に開催されることになります。さぞかし厳粛で荘厳な一夜となることでしょう。

殿下が世界中の競馬場に送り込んだ名馬の数々は枚挙にいとまがありません。日本ファンにとっても感慨深いものがあります。殿下の最高傑作かもしれない英ダービー馬ナシュワンは、その系統から派生したサラブレッドとディープインパクト系との配合からは、エリザベス女王の愛馬ハイクレアのクロスが生まれることでファンには有名ですね。とくにPOGファンには垂涎の的、大人気を博して競馬の裾野を大きく広げてくれました。ちょっと地味に聞こえますが、ベルモントSの勝ち馬ジャジルも世界の競馬史にとって貴重な存在です。クールモア所有となった半妹ラグストゥリッチズがカーリンなど強豪牡馬をなぎ倒し兄弟制覇を達成、日本に輸入されながら敢えて三兄弟連覇に挑戦したカジノドライヴも半弟に当たります。今にして思えば、これだけの馬が良く日本に来てくれたものですね。

殿下を偲ぶワールドカップ・ナイトに、日本から6レースに12頭が参列できるのは何よりでした。それにしても、つい先だってフランケルを贈り届けてくれたジュドモントファームのカリド・アブドゥッラー殿下が、日本でもビッグレッドファームの岡田繁幸“総帥”が亡くなられたばかりというのに、巨星が相次いで墜ちるのは競馬界にとって痛恨の極みですが、無観客とはいえレースが開催できるのは幸いです。天国のハムダン殿下、アブドゥッラー殿下、岡田“総帥”もお喜びだと思います。厳粛にて荘厳、そしてなおかつ未来への希望が拓ける一夜になることを祈ります。

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