きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

歌人“京雅”さんからの和歌(沓冠) ジャパンカップ

先週は、無敗の牝馬三冠馬、無敗の牡馬三冠馬、そして芝のGI最多勝記録を持つ3頭が激突したジャパンカップ(GI)が行われました。競馬専門紙や競馬番組だけでなく、一般紙やニュース等でも取り上げられた最強馬決定戦を制したのは、このレースを最後に引退が決まっていた5歳牝馬、アーモンドアイでした。覆面歌人の京雅さんからは、このジャパンカップの和歌が届きました。是非、隠れたメッセージを読み解いてください。(メッセージの答えは最後に)

ジャパンカップ 京雅

夢の旅
馬はラストを
首位来たか
美しき技
乗るはルメール

隠れたメッセージは「ゆうしゅうの びをかざる → 有終の 美を飾る」です。
夢()の旅(
馬()はラストを(
首(しゅ)位来たか(
美()しき技(
乗()るはルメール(


<京雅さんの和歌【沓冠】の解説>
無敗の牝馬三冠馬デアリングタクト、無敗の牡馬三冠馬コントレイル、芝のGI8勝のアーモンドアイ、この3頭が相まみえるとあって、多くの注目が注がれた今年のジャパンカップ。当日の指定席の倍率は11.54倍と、注目度の高さが伺えます。
世紀の一戦、既に皆様もご存知の通り、制したのはこのレースが引退レースとなる女帝アーモンドアイでした。
レースは、菊花賞馬のキセキが後続を大きく引き離す展開。3頭はアーモンドアイが4番手、デアリングタクトが7番手、コントレイルが9番手で直線を迎えました。縦長の展開で、追い出しのタイミングも難しい状況でしたが、鞍上のC.ルメール騎手は全く動じず、前の馬を捕らえつつ、後続には抜かせない抜群のタイミングで追い出しを開始する、美しき手綱裁き(技)。「前走は記録がかかっていたため緊張していたが、今回はサヨナラパーティー」とルメール騎手が陽気に語っていたように、引退レースを先頭で駆ける“夢の旅”。アーモンドアイは本当の意味で最後となるラストの直線を首位で駆けて来ました。2頭の三冠馬コントレイルとデアリングタクトも迫りますが、芝のGI最多記録の女帝に迫ることはできませんでした。
夢の旅のゴールを先頭で駆け抜けた瞬間、ルメール騎手はこの馬こそがNo.1だとばかりに、観衆にアーモンドアイを指差して、彼女の走りを称え、観衆は割れんばかりの拍手で応えました。この時ばかりは、東京競馬場が満員の客席で溢れているかのように感じる不思議な時が流れていました。隠れたメッセージの通り「有終の美を飾る」アーモンドアイでした。


アーモンドアイはJRA以外の賞金も含めて19億1,526万3,900円を獲得。獲得賞金でこれまでトップだったキタサンブラックを抜いて首位に。そして、自身の持つ芝のGI勝利記録を9勝に伸ばす記録づくめの勝利でもありました。
アーモンドアイは早ければ、来年には母として繁殖活動を行い、2022年には初仔が誕生します。アーモンドアイの子供がターフを駆ける日を今から楽しみにしたいと思います。


※ 【沓冠】の解説
和歌の折句の一種。意味のある10文字の語句を、各句の初め(冠)と終わり(沓)に1字ずつ詠み込んだもの。「沓」とは、体の一番下に着けるもので、「冠」とは、一番上に着けるものであることから、「沓冠」といわれる。 平安貴族の「言葉遊び」で、短歌の中に、本文とは違う言葉を忍び込ませて、和歌の表面とは違ったメッセージを密かに伝えているところが、面白いところ。

※歌人“京雅”さん
長く競馬サークルに住みついている覆面歌人。本年から、当協会ホームページで連載開始。渾身の一首をお届けするので皆さんも、是非、謎解きに挑戦してください。

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