きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

女傑は死なず!

12月18日は、泉谷 楓真 騎手、中内田 充正 調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

野球で言うストーブリーグの季節です。実績馬、血統馬の多くが種牡馬として、また繁殖牝馬として第二の仕事に向かいます。ヨーロッパでは、とくに牡馬は、その種牡馬価値を損なわないために3歳で引退の道を選ぶ馬も少なくありません。最近でこそシーズン一杯を走り、凱旋門賞などに挑戦するのが普通になっていますが、一昔前はダービーを勝てば、それで競走馬卒業というのも珍しくありませんでした。それに比べて牝馬は長く現役を続けるケースも多く、G1シーンを盛り上げて来ました。

そんな矢先に来季は6歳になるマジカルが現役続行を発表しました。ヨーロッパを中心にG1を7勝している女傑です。彼女のベストレースは5着に敗れた昨年の凱旋門賞ではなかったか?と密かに考えています。後に伝説と化したドロンコ馬場で果敢に先行し、大バテして不思議のないタフなレースで直線も粘りに粘り5着に入線しています。同じような位置どりで競馬したフィエールマンが大きく離されたドン尻に大敗したことを思えば、舌を巻かせる強靭な底力と感嘆するしかありません。次走の英チャンピオンSを快勝したことからも地力の確かさは疑いようがありません。十分すぎるほどの活躍で、シーズン一杯での引退と繁殖入りを誰もが疑っていませんでした。ところがエイダン・オブライエン調教師は、彼女に現役続行のミッションを下します。彼女が、さらにもう一段上のレベルに達することができる余力を残していると直観したからでしょう。

こうして引退を撤回したマジカルは、コロナ禍で散々な開催スケジュールだったにも関わらず、オブライエン師の見立てをも上回る目覚ましい活躍を見せてくれました。シーズン初頭からプリティポリーS、タタソールズゴールドCとG1を連勝。インターナショナルSはシーズン後に年度代表馬馬に輝いたガイヤースの2着に涙を呑みましたが、続く愛チャンピオンSでガイヤースを返り討ちに仕止め、昨季以上の絶好調で凱旋門賞を迎えます。ところが、「好事魔多し」、凱旋門賞直前にオブライエン厩舎の飼料に禁止薬物混入が
指摘され、マジカルはじめ有力馬が出走取消の事態に発展します。しかしマジカルとオブライエン師はそれで諦めず、BCターフ、香港カップと各国を転戦します。結果はご存じのように一息足りずに終わりましたが、オブライエン師は彼女に闘争心が失われていなことを確信します。来季はさらに円熟したレースを見せてくれるでしょうし、できるならジャパンCに来日してくれないでしょうか?

×