きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

コロナ時代とリスクヘッジ

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ことし日本では史上初めて、牡牝ともに無敗の三冠馬が誕生しました。しかし世界全体を俯瞰すれば、コロナ禍の不安定な番組スケジュールの下、またジョッキーや厩務員など競走馬に欠かせないパートナーの国境をまたぐ移動には厳しい検疫期間が課せられるなど、クラシックやG1レースを勝ち続けた馬は稀有な存在だったと言われています。

アメリカでは三冠レースのスケジュールどころか一部では距離まで変更され、もはやクラシックの体を為さない状況に追い込まれました。ヨーロッパではスケジュールは凡そ1ヶ月遅延と最小限の変更に抑えられましたが、古馬G1を含めて軒並みに賞金半額され一流馬の去就に影を落としたのも事実です。そうした状況下で、ここまでレーシングカレンダ通りに全スケジュールを遂行したJRAの危機管理能力は抜きん出ていたと思います。カレンダーを信じて、目標レースすべてに愛馬を最高に仕上げ切った杉山晴紀師、矢作芳人師の一点の曇りもない判断力も見事でした。攻めの姿勢が最高のリスクヘッジに変化することを証明してくれました。

ヨーロッパ2歳戦線は、アイルランドのナショナルS、イギリスのデューハーストSとそれぞれの国の最高峰レースで同じ顔ぶれの3頭が1-2-3で頂点を争い、来春のクラシックへ決着を持ち越しました。エイダン・オブライエン厩舎のセントマークスバシリカとウェンブリー、ジョセフ・オブライエン厩舎のサンダームーンの「3強」時代の到来です。常に勝利に前向きなオブライエン・ファミリーが世代上位を独占しています。ここでもリスクヘッジの在り方が垣間見えるようです。


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