きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

ニューヨークに勇気を

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アメリカ三冠レースの日程が、ようやく決まりました。例年なら5月第1土曜にチャーチルダウンズ2000mでケンタッキーダービーが開幕し、2週間後にピムリコ1900mのプリークネスS、その3週間後にベルモント2400mのベルモントSとわずか5週間で三冠レースの終幕を迎えます。緒戦に最大のクライマックスとされるケンタッキーダービーが組まれ、短期間に集中して施行される独自の三冠体系で、それを乗り切るために求められる体力の頑健さ、仕上げの難しさは想像を超えるものがあるようです。

ところが今年は、第1弾が本来なら最終関門となるはずのベルモントS。距離も2400mから1800mに短縮して6月20日に行われます。三冠の第2ラウンドは9月5日のケンタッキーダービー。最終ラウンドのプリークネスSは10月3日に予定されています。順番も違えば、レース間隔も全体で3ヶ月半余りに延び、一部で距離まで変更されて、どこか違和感もある番組編成です。どんな名伯楽にも経験のない難関ですが、コロナウィルス感染拡大に苦しむニューヨークの人々に、いち早く勇気を届けようという配慮も働いているのでしょうから、異議を唱える理由はありません。

「ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー」シリーズの日本ラウンドで出走権を獲得しているのは、伏竜Sを勝ったヘルシャフト。ヒヤシンスSのカフェファラオがポイント2位に付けています。現段階では、人馬の移動を伴う遠征の扱いは流動的なのですが、ゆったりした今年のローテーションは日本調教馬に向いているとも考えられ、とくに2戦2勝とキャリアの浅いカフェファラオには時間が何よりのプレゼントかもしれません。馬名通り三冠馬アメリカンファラオの初年度産駒で、ファラオ育ての親ボブ・バファート調教師も一目置く素質馬です。大変な時期ですが、三冠レースを通じてニューヨークに、アメリカに、そして世界に勇気を届けてくれることでしょう。

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