きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

香港四番勝負

12月6日は、中尾 秀正 調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
ようこそいらっしゃいませ。

香港ではゴーデンウィークと年末の年2回、華やかな国際招待レースが挙行されますが、その本質は馬産なき競馬大国であり、競走馬のほとんどはセン馬で怪我でもない限り息長く現役生活を続け、新旧交代が起きにくい環境にあります。ところが最近は競馬人気の興隆とともに、オーストラリアやニュージーランドを中心にヨーロッパ各国から輸入する馬のレベルが高まっています。香港スプリント連覇のロードカナロアの出現は香港ホースマンの眼を日本のセレクトセールなどに向けさせる効果があったようです。こうした潮流は、今年の国際競走デーにも反映されています。各カテゴリーとも地元馬の新旧対決に加えて、高額賞金や競走馬輸出のマーケットに魅力を感じる外国勢が三つ巴の戦いを繰り広げる構造が出来上がりました。一流外国馬の存在は香港競馬のレベルを測る分かりやすい物差しであり、そのため魅力的な高額賞金や手厚い招待制度が実施されています。

各レースを発走順に眺めて行くと、最初の香港ヴァーズ2400mは地元の王者エグザルタントが今年の英ダービー馬アンソニーヴァンダイク、イギリスから直行したディアドラなど層の厚い3頭の日本馬を迎え撃つ一番。他にも一発を狙うヨーロッパ勢も多士済々で、メンバーの濃さは近年でも屈指、馬券的にも面白い一戦になりそうです。
次の香港スプリント1200mは、スプリント王国のプライドをかけて強力な地元馬が揃いました。注目は史上初の3連覇でロードカナロア越えを狙うミスタースタニングに挑戦する新星エセロです。前走のトライアルでは後続に影も踏ませない圧逃劇でファンを驚かせました。香港入り以来、出遅れて3着に負けた以外は6戦5勝と破竹の勢いです。他にも悪くても3着という超堅実派ビートザクロック、長い闘病から復活したホットキングプローンなど地元馬の堅陣は分厚いですね。外国馬はオーストラリアのG1馬インハータイム、シャティンの馬場適性がありそうな日本馬ダノンスマッシュの2頭、未知の魅力でダノンの一発に期待する手もありそうです。

3番目の香港マイル1600mは、マイルではレーティング世界一のビューティージェネレーションが登場します。トライアルシリーズでは酷量に泣いて不覚を取りましたが、ライバルと同条件で走れるG1なら話は別。世界のマイル王の実力を見せつけてくれそうです。トライアルで2度もビューティーに先着しているワイククが最大の惑星ですが、インディチャンプを総大将とする日本勢の層の厚さもさすがで日香対決は見ものです。
オオトリの香港カップ2000mは、同日に施行される4つのG1でも最高賞金を誇る格の高いレースですが、出走予定だったアーモンドアイに恐れをなして有力馬がヴァーズやマイルに回ったため、少し手薄なメンバーになりました。昨年と一昨年の覇者グロリアスフォーエヴァーとタイムワープ全兄弟のディフェンディングチャンピオンは健在ですが、ファンの気分は新興勢力に期待を寄せています。フローレは香港4歳三冠シリーズでダービーとクラシックCを制した二冠馬。成長盛りでもあり、それも加味して1番人気に推されています。ライズハイは香港の顔として世界に名を売るビューティージェネレーションをトライアルで倒した上がり馬。しかしこれなら、オーストラリアで悲願のG1制覇を成し遂げたエイダン・オブライエン厩舎の隠れた実力馬マジックワンドや、4月のG1クイーンエリザベス2世Sを鮮やかな末脚でレコード勝ちしたウインブライトも争覇圏内でしょうね。ウインブライトはここを勝てば種牡馬への道が開ける可能性もあり、父ステイゴールドのラストランの舞台となったシャティンで乾坤一擲の走りを披露して欲しいものです。

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