きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

アスコットで勝つには?

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競馬の華・ロイヤルアスコット開催で世界中が盛り上がっています。先日のG1プリンスオブウェールズSは、日本でも馬券発売されファンの関心を集めました。残念ながら日本から出走したディアドラは重い馬場でスタミナを消耗し、直線は伸び切れないまま6着に敗れています。しかしドバイに始まって、香港からイギリスに直接転戦するという、日本馬には余り見られなかった厳しいローテーションを乗り越えての奮戦は立派です。この後も馬の状態と相談しながら、秋の愛チャンピオンS挑戦の選択肢もあるようです。頭が下がる思いです。このディアドラとチーム橋田の貴重な経験は、先々必ず日本競馬の大きな飛躍に貢献してくれるはずです。本当にお疲れさまでした。

プリンスオブウェールズSは、過去にスピルバーグとエイシンヒカリが挑戦して歯が立ちませんでした。やはりヨーロッパ特有の重厚な馬場は日本育ちのサラブレッドにとって鬼門のようです。とくにアスコット競馬場は、起伏に富んだ自然の原野を拓いたコースで粘り強いスタミナが要求されます。雨の多いイギリスの気候の影響もあって道悪になればお手上げです。少し前にはドーム化が真剣に検討されたほどです。この競馬場で日の丸を翻らせるには、アスコットコースをそのまま日本に持って来て、アスコット仕様の調教場を建設するしかないのかもしれません。破天荒に聞こえるでしょうが、日本のホースマンにはそれに近いような経験をした歴史があります。

若い競馬ファンには想像もできないでしょうが、その昔「東高西低」と言われた時代が長く続きました。いつもは平坦コースで競馬をしている関西馬は、クラシックとなると坂のある中山競馬場や東京競馬場に遠征することになり、坂に阻まれて関東馬の軍門に下ることが多かったからです。関西の調教師たちは一計を案じて、開設間もなかった栗東トレセンに坂路コース新設の猛アピールを続けます。紆余曲折、大変な苦労があったようですが、晴れて坂路コースが出来上がり、そこから関西馬の快進撃が始まります。調教師の技術も重要ですが、施設としての調教場はバカにはできません。ダート競馬でアメリカ馬に敵わないのは、ダートにおける調教の質と量の差だと、ヨーロッパを代表する巨匠エイダン・オブライエン調教師が喝破しています。お金のかかることですが、ロイヤルアスコットでの勝利に、それだけの価値はあると思います。

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