きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

中山を彩った名馬たち【38】ツインターボ
1993年9月19日 第39回オールカマー

9月21日は、木幡 育也 騎手の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
道はただ、ひとつ。
――逃げて、逃げて、逃げまくる。
それが、個性派中の個性派、ツインターボの走りだった。

馬房ではおとなしいのに、人が乗ると豹変。ゲート試験の通過に4ヶ月を要したツインターボのデビューは、1991年3月2日、中山で行われた新馬戦。この時、笹倉武久調教師が、石塚信広騎手に出した指示は、「好きなように走らせろ。ハナに立て。あとは舵をとるだけでいい」というシンプルなものだったという。結果は、2着に3馬身差を付けての圧勝。この時から、ツインターボの一人旅が始まった。

後続をちぎっての鮮やかな逃げ切り勝ちか、それとも、馬群に沈む大敗か。いつのレースでもファンは、固唾をのんでその走りを見守り、最後の直線で失速した瞬間、「あーっ」というため息を吐いた。
――今日はだめだったけど、次はいけるかもしれない。
そんな思いを抱きながら。
そんな彼が魅せた、もっともツインターボらしいレースが2つある。ひとつは、鞍上の中舘英二が、「僕は掴まっていただけ。馬が勝手に、鮮やかに勝っちゃった」と口にした福島競馬の七夕賞。もうひとつが、このオールカマーだ。
手綱をとったのは、七夕賞と同じ中舘英二騎手。人気は、GI2勝のライスシャワー、桜花賞馬のシスタートウショウに譲ったが、レースがはじまるとその主役は、ツインターボのもの。逃げて、逃げて、ただひたすら逃げて、向正面では2番手のホワイトストーンとの差は約10馬身。
――どこで失速するんだ!?
スタンドから漏れるそんな声もどこふく風で先頭をひた走り、ただ一頭、最後の直線に入ると、大歓声をバックに、そのまま鮮やかに逃げ切ってみせた。

×