きょうの蹄音 競馬にまつわるちょっといい話

中山を彩った名馬たち【09】ディープインパクト
2005年3月6日 第42回弥生賞

3月2日は、二本柳 壮 騎手、森 裕太朗 騎手、庄野 靖志 調教師の誕生日です。誕生日おめでとうございます!
クラシック第1弾皐月賞に直結するトライアルレース、報知杯弥生賞。
ひとつ勝つだけでも大変なこのレースを7度制した騎手がいる。
武豊――デビューから、数えきれないほど多くの記録を塗り替えてきた不世出の天才ジョッキー……彼にとって中山を舞台にして行われる弥生賞とは、どんなレースなレースなのだろうか。
答えは即座に返ってきた。
「勝ちたいレース。勝たなければいけないレース。でもそれ以上に、内容を問われるレースです」
初戴冠は1995年のダンスインザダーク。そこから、ランニングゲイル、スペシャルウィークと3年連続。6年置いて、2005年のディープインパクトから、アドマイヤムーン、アドマイヤオーラとまたも3年連続制覇。2年置いて、2010年はヴィクトワールピサで勝利を飾っている。
どのレースも簡単ではなかったが、中でも、ディープインパクトとともに挑んだ第42回弥生賞は、はじめての長距離輸送、はじめての競馬場、そして、2歳王者との初対決というクリアすべき問題が山積したレースとなった。

単勝1.2倍。
圧倒的な支持を得たディープは後方2番手を進み、3コーナーから4コーナーにかけて驚異的なスピードで一気にまくっていく。そして最後の直線――。
――ディープは今日も飛ぶのか!?
5万を超えるファンの熱い視線がその末脚に注がれる。
結果は……手前を変えずに走ったディープは、クビ差の辛勝。飛ばなかったディープに対し、スタンドからは落胆のため息が漏れた。
しかし――――。
レース後、武豊と池江泰郎調教師の顔には笑みが広がっていた。
一度もムチを使うことなく、すべての課題をクリアしての完勝。手前を変えさせようと思えばできたはずなのに、あえて、ディープ自身にそのことを理解させようとしたのだ(事実、この後、ディープはスムーズに手前を変えるようになった)。
無敗の三冠馬へのプロローグ……。
それは、ここ、中山の弥生賞からすでに始まっていた。

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